国立大学の留学生向け授業料が4月から自由化された。今後は授業料値上げによる増収分を原資に留学生の受け入れ環境を整えることが可能になる。実際に引き上げを検討している大学は一部とみられるが、各大学は教育内容の充実と授業料値上げを効果的に組み合わせ、留学生の受け入れ拡大をめざすべきだ。
日本の大学は学部レベルでの国際化が遅れている。留学生割合は2020年で3%にとどまり、政府の教育未来創造会議は33年までに経済協力開発機構(OECD)平均の5%にする目標を掲げた。
国立大の場合、制度面の障壁が2つあった。1つが約64万円という授業料の上限だ。留学生を増やすには英語で行う授業や日本語講座の拡充、宿舎の整備など様々な準備が要る。今回の規制緩和で、そのコストを授業料に転嫁する道が開かれたことは一歩前進だ。
欧米の有力大学は留学生の授業料を国内学生の2〜3倍に設定していることも珍しくない。授業料の値上げを着実に教育の質向上につなげ、留学生がさらに増える好循環を実現したい。
もう1つの障壁は、国立大はほとんどの場合、入試で留学生の募集人数を「若干名」としていることだ。現行制度では日本人学生を確保した上で、余裕がある場合に限って留学生を受け入れる形で、非常に門戸が狭い。これでは海外学生の応募意欲は高まらない。
文部科学省は留学生の定員を柔軟に設定しやすくするための制度改正を検討中だ。留学生を入学定員の外枠扱いとする海外の例も参考に具体化を急ぐべきだ。
私立大学を含めて、留学先として日本の魅力を高めるには温かく迎える環境が欠かせない。日本での就職を希望する学生のため、採用選考で過度に日本語力を求めないなど企業も配慮が必要だ。
大学の国際化はグローバルビジネスの担い手や様々な分野で日本と海外諸国を結ぶ人材の育成に資する。留学生に選ばれる大学と社会を本気でつくるときだ。