【ナゼ?】万博メタンガス爆発事故で教育現場に不安…“心配はない”はずのパピリオンエリアでも検出 波紋を呼ぶ万博への遠足(後編)(2024年6月2日『読売テレビ』)

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事故があった現場
 2025年大阪・関西万博をめぐり、交野市長が「(万博への遠足に)学校単位で行かなくてもいい」と表明し、波紋が広がっている。理由の1つが、今年3月に起きた「メタンガス爆発事故」だ。30日、新たにパビリオンが立ち並ぶエリアでもメタンガスが検出されたことで、教育現場の不安はより一層強まる可能性がある。(報告:万博取材班)
■3月に爆発事故 教職員組合「同じような事故が起こるのでは」
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職員組合の申し入れ
 「同じような事故が起こるのではという不安や子供を連れていって大丈夫なのかという心配の声があがっている。招待という形でやる以上、きちっとしたサポートをやるべきだ」
 大阪府が進めている府内の小・中学生などを学校単位で万博に無料で招待する事業に対し、4月18日、 大阪府の教職員らで作る労働組合が「待った」の声をあげた。
 その理由は、3月28日にトイレの建設現場で溶接作業中の火花が可燃性のガスに引火して起きた爆発事故だ。コンクリートの床が約100平方メートルにわたって壊れたほか、天井などにも損傷が見つかった。
 万博会場の夢洲は元々、産業廃棄物の処分場で、地下にはメタンガスなどの可燃性ガスが溜まっていて、会場内にはガスを抜くパイプなどが設置されている。万博協会は工事前にガス濃度の測定を行わなかったことが事故の原因として、再発防止策をまとめた上で、4月22日に工事を再開した。
■万博協会「心配していない」と説明した場所からガス検出
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万博協会の会見
 ところが、当初は“メタンガスが出ない”と説明されていたエリアからも、メタンガスが出ることが新たに判明した。
 事故を受けて、万博協会は海外や企業などパビリオンが集結する「パビリオンワールド」の建設現場内のメタンガスの濃度を再検証した結果、4か所で低濃度のメタンガスを検出したと発表した。
 万博協会は、検出されたガスの濃度は最大7%LELで、法令で火器の使用禁止や労働者の退避が求められる基準(30%LEL)の4分の1以下だとして、万博協会は工事は継続するという。
 ただ、このパビリオンワールドのエリアについて、爆発事故後の4月に行われた会見では、「(事故が起きた)グリーンワールドと違ってガス抜きパイプもないし、土地を借りるにあたっての条件・制限はないと大阪市から聞いていたので、何も対策しなくていいということで進めてきた」と説明。埋め立てに使われた材料が事故現場の土壌とは異なることから、「心配はしていない」としていたエリアだった。
 5月30日の会見では報道陣から質問が相次いだが、万博協会は、「海底には有機物があるので、(メタンガス検出は)よく起こり得る事象ではあると一般的にいわれている」と釈明した。
■府への回答期限は5月末…教育現場からも「メタンガス爆発」の懸念
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万博会場空撮(4月撮影)
 「万博への招待事業」について、大阪府は各学校に5月末までに回答するよう求めていた。大阪府の吉村知事は、対象となる約1900校のうち、24日時点で約1280校から回答があり、そのうちの約75%にあたる約950校が「希望する」としていることを明らかにしている。
 ただ、メタンガス爆発への教育現場の不安の声は根強い。読売テレビが取材した府内の小学校の校長は、「未定・検討中」と回答したことを明かした上で、その理由に「メタンガス」の懸念を語った。「希望する」と回答した府内の学校も「不安要素があるのは同じ」と打ち明けた。
 新たにパビリオンが集まるエリアで低濃度ながらメタンガスが検出されたことで、さらに不安が拡大することが懸念される。
 万博協会は、専門家の意見を聞いた上で、ガスが検出された原因を調べ、6月中に安全対策を取りまとめるとしているが、1日に最大約23万人が訪れると推定される万博会場で、教育現場にとっては「子供の安全」が最優先であることに変わりはない。

万博工事現場での爆発事故に関して、府・府教委として責任ある対応を求めます
 大阪教職員組合(大教組)と大阪府立高等学校教職員組合(府高教)、大阪府立障害児学校教職員組合(大障教)は、4月18日に大阪府知事大阪府教育委員会宛に「万博参加についての意向調査の実施にあたり、万博工事現場での爆発事故に関して、府・府教委として責任ある対応を求めます。」を提出しました。
2024年4月18日
 
大阪府知事        吉村洋文 様
大阪府教育委員会 教育長 水野達朗 様
 
万博参加についての意向調査の実施にあたり、万博工事現場での爆発事故に関して、府・府教委として責任ある対応を求めます。
 
 
大阪教職員組合 中央執行委員長      北川 美千代
大阪府立高等学校教職員組合 執行委員長  志摩 毅
大阪府立障害児学校教職員組合 執行委員長 西面 友史
 
 
 府教委は、2025大阪・関西万博の学校行事による参加について、各学校に対し、意向調査を行っており、5月末までに報告するよう求めています。
 一方、万博協会のHPでは「会場建設現場における事故報告」として、「2024年3月28日(木曜日)10:55頃、グリーンワールド(GW)工区の屋外イベント広場横、東側のトイレ1階で、溶接作業中に発生した火花が、配管ピット内に溜まった可燃性ガスに引火したことにより、1階床が破損しました。この事故による、けが人はありません」と掲載されています。万博会場となる夢洲は、もともとゴミや産業廃棄物の処分場であり、かねてから可燃性ガスの発生問題が指摘されており、国会でもその危険性が取り上げられています。万博協会は「会場予定地では、GW工区のみ、一部管理型の廃棄物処分場となっており、可燃性ガスが発生しています。他のエリアでは、建設残土等で埋め立てされており、可燃性ガスの発生はありません」としていますが、夢洲他区の地下鉄工事現場でもメタンガスが見つかり、大規模な対策工事が行われています。万博開催中も同様の事故が起こる恐れがあります
学校現場や父母・府民から、「本当に子どもを連れて行っても大丈夫?」など心配する声が出ています。子どもたちを招待する以上、府・府教委はこのような声に耳を傾け真摯に対応する責任があります。府・府教委として、今回の事故についてきちんと調査し、安全であることを確認すべきです。それができるまでは、招待事業は見送るべきです。もちろん、意向調査も中止すべきです。
 また、万博に行くかどうかの検討にあたっても、不安や心配の声が多数出ています。建設途中で不明なことがあまりに多いこと、情報が圧倒的に少ないことなどがその理由です。府教委として、現場からの疑問や要望にきちっとこたえるべきです。
 さらに、「子ども招待」とされながら、交通手段確保や、熱中症対応などの安全対策なども現場丸投げの状態です。府・府教委として、安全・安心に行事が実施できるようサポート策を講じるべきです。
 これらを踏まえて、府・府教委に以下のことを求めます。

1.大教組との交渉で確認している通り、学校行事としての万博参加は、各学校が判断するものであることを学校現場に周知すること。意向調査は「応じない」ことも可能であることを周知するとともに、「応じる」とした場合でも、実施段階でやめることができることを確認すること。
2.子どもを招待する以上、今回の事故について、学校現場に情報提供すること。府・府教委としてきちんと調査し、安全・安心を確認すること。確認できるまでは、招待事業や意向調査は延期すること。
3.学校行事としての検討・計画・実施に向けて、現場からの問い合わせや要望などについて、府・府教委として、責任を持って対応すること。問い合わせや要望について、府教委の窓口を明らかにすること。
4.府・府教委として、熱中症対応などの安全対策や、行事実施途中に起こる不測の事態に対応する人の配置や現地窓口の設置など、安全・安心に行事が実施できるよう対策をとること。
5.府・府教委として、バスの確保だけでなく、計画通り安心して行事が実施できるよう交通手段の確保をおこなうこと。
 
以上