法廷に手話通訳者、点字資料も… 強制不妊訴訟で最高裁が見せた「障害者への配慮」、さらに改善の余地が(2024年5月28日『東京新聞』)

 旧優生保護法(1948〜96年)下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、全国の障害者らが国に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は29日の審理で、手話通訳者の配置や、法廷での口頭でのやりとりを文字にしてモニターに映すなど、障害者に配慮した異例の態勢を整える。傍聴人向けには、訴訟の概要を説明した資料の点字版を初めて用意する。(太田理英子)
◆要約モニター設置、車いすスペース拡大
 原告は東京や仙台など5地裁に提訴した男女12人で、聴覚障害者や知的障害者らがいる。大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)で原告、国双方の意見を聴く弁論があり、夏にも判決が言い渡される見通し。障害のある人が傍聴することも見込まれ、原告側弁護団などが最高裁に配慮を求めていた。
キャプチャ
最高裁が初めて作った傍聴人向けの点字版資料
 法廷内では、原告席と傍聴席から見える位置の計3カ所に原告側が手配する手話通訳者を配置。口頭でのやりとりをその場で文字化する要約筆記者も認め、可搬式モニター2台にその文字を映す。大型モニター4台には、原告側、国側の双方の主張を記した資料を映す。車いす利用者の傍聴席は、通常2人分だが、傍聴席後方を10人ほど利用できるようにする。
◆下級審への波及「個別具体的に判断」
 傍聴人に配る裁判の概要や争点をまとめた資料は、平易な言葉にしてふりがなを付け、初めて点字版も作成。法廷の外では傍聴券交付時の案内などのため、裁判所としては全国で初めて手話通訳者を手配し、職員も筆談ボードなどを使って対応する。
 最高裁は「原告側と協議を重ねた上で、積極的対応をすることにした」という。地裁、高裁での対応への波及については「(各裁判所が)事件内容や庁舎構造を踏まえ、個別具体的に判断すること」としている。
キャプチャ2
◆通訳に公費負担なし「非常に遺憾」
 最高裁の対応について、訴訟関係者らからは「前進だ」と声が上がる一方、傍聴人のための手話通訳者らを原告側が手配することになったことには、「障害者が障害のない人と同水準で司法参加できるようにすべきなのに、差別的だ」と厳しい批判が出ている。
キャプチャ3
「障害者の権利保障のため、手話通訳者は公費負担とすべきだ」と訴える優生連のメンバーら
 「初めてのことで試行錯誤しながらできるだけ配慮し、対応してくれた」と、原告側弁護団の関哉直人弁護士。ただ、法廷内の手話通訳者らの公費負担が認められず、「非常に遺憾。今後の裁判でも引き続き要請したい」と話す。
◆「情報保障」が遅れている日本
 今回、傍聴人のための手話通訳者や要約筆記者を手配したのは、一連の訴訟を支援してきた「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」(優生連)。優生連によると、地裁や高裁での審理でも、原告や傍聴人向けの手話通訳者の配置は認められても、公費負担となった例はない。
 優生連の藤井克徳共同代表は23日の記者会見で「障害者排除が原点にあった優生保護法問題を裁く司法府として、まともな対応なのか」と批判。障害者の司法へのアクセスが法的に保障されている米国などと異なり、日本では障害の有無に関係なく必要な情報にたどり着ける「情報保障」が遅れていると指摘。「人権のとりでとして、最高裁は障害者の
司法参加においても歴史的判断を」と求めた。
 

キャプチャ
国は被害者に謝罪と補償を!
優生保護法裁判 最高裁大法廷での
弁論期日 報告集会・記者会見

・参加費無料
・申し込み不要
・手話通訳、要約筆記あり

日時:2024年5月29日(水)17:00~18:30
最高裁の傍聴については次段「大法廷弁論の案内チラシ」参照
場所:衆議院第1議員会館 大会議室+ZOOMウェビナーによる配信(300名定員)

内容
・弁論期日の報告、裁判の解説、参加者から発言、
 記者会見 等を予定

会場地図
東京都千代田区永田町2丁目2−1
・「国会議事堂前」1 番出口 徒歩 3 分
・「永田町」1 番出口 徒歩 5 分
・「溜池山王」5番出口 徒歩 8 分

キャプチャ2
決定!優生保護法裁判の最高裁判所大法廷での弁論期日

●いつ?
2024年5月29日(水) 

●傍聴券の抽選にあたって必要となる整理券の配布締切時間
午前9時半/午後1時

●整理券配布場所
最高裁判所西門(永田町駅4番出口から徒歩約5分)

最高裁でたたかう原告は?
■午前10時30分~
①原告:空ひばりさん・野村花子さん
野村太朗さん (2022年2月22日大阪高裁判決)
②原告:北三郎さん (2022年3月11日東京高裁判決)

■午後2時~
③原告:小島喜久夫さん (2023年3月16日札幌高裁判決)
④原告:髙尾奈美恵さん・小林寳二さん・鈴木由美さん(2023年3月23日大阪高裁判決/兵庫訴訟)
⑤原告:佐藤由美さん・飯塚淳子さん(2023年6月1日仙台高裁判決)
●その他:判決日は未定です。

★たくさんの傍聴者で原告を応援するため、ぜひご参加ください!

★傍聴に外れた人の待機場所を、衆議院第一議員会館内に準備しています。
12:15から一回目の記者会見と午前の部の報告会を開催します。※手話通訳・要約筆記あり
17:00からの二回目の記者会見・報告集会も同じ場所で開催予定です。※同上