市民が刑事裁判に加わる裁判員制度の開始から15年。経験者の大半が「良い経験」とする一方、裁判員候補となっても辞退する人は約67%に上る。国民に広く浸透したとは言い難い。より参加しやすい制度への改善を求めたい。
大いに評価できるものの、残念な数字もある。裁判員裁判が始まった2009年当時に53・1%だった辞退率は徐々に高まり、23年は66・9%と高止まりしているのだ。多くの人が辞退、欠席しては制度の意義が薄まってしまう。
原因の一つは、裁判員の在任期間である審理期間の長期化だ。09年は3・7日だったが、23年には14・9日になった。長期化に伴い参加できる人は限られていく。
気掛かりなのは、争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの期間が長期化していることだ。検察側が段階的に証拠開示するため、1年余りを要する事例もある。
被告人側がいち早く防御の準備ができるよう、検察側は有罪立証の証拠ばかりではなく、無罪方向の証拠も提出すべきだ。
裁判員が死刑を選択し得る制度であり、誤判があってはならない。そのためにも、証拠の全面開示に踏み切るべきではないか。
裁判員制度には、集中審理による迅速な公判審理も期待されており、公判前整理手続きの迅速化は必須であろう。