「5万円超」公開の公明党案、岸田首相「連立の基盤崩せない」とのむ…麻生副総裁の反対振り切る(2024年6月1日『読売新聞』)

 政治資金規正法改正を巡り、岸田首相(自民党総裁)は自民内に慎重論が強い公明党日本維新の会の要望を受け入れ、今国会での改正実現になんとか道筋をつけた。世論の逆風の中で他党の主張を軽視すれば政権がもたないと判断したためだが、要求をほぼ「丸のみ」する首相の決断は、党内にしこりも残した。
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 「自公連立の基盤を崩すわけにはいかないだろ」
 
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 首相は5月30日夕、首相官邸でそう語り、公明の要望を受け入れる意向を周囲に示した。公明は、政治資金パーティー券購入者の公開基準額を「5万円超」に引き下げるよう強く求めていた。自民内には「公開を嫌って購入者が減れば、若手が資金集めに苦労する」として、当初案の「10万円超」にとどめるべきだとする意見が根強い。
 その筆頭が、政権を中枢で支える麻生副総裁と茂木幹事長だ。29日夜、東京都内の日本料理店で茂木氏とともに首相と向き合った麻生氏は、首相に「譲歩しようなんて思わないことです。党内はもちませんよ」と迫った。若手の事情を理由に説得する麻生氏らに、首相は「とにかくこの国会でまとめます」と繰り返した。
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政治改革に向けた合意文書を交換する日本維新の会の馬場代表(左)と岸田首相(31日午前、国会で)=川口正峰撮影
 これに対し、公明にパイプを持つ森山総務会長や菅前首相は、公明との協調優先の立場だ。森山氏は29日、昼食をともにした首相に「連立維持を重視すべきです」と進言。菅氏も翌30日、首相に「連立を組んでいるんだから一緒にやるしかない」と求めた。
 一方、党内若手の間では、厳しい世論を背景に「もはや『10万円超』では有権者に説明できない」と、「5万円超」の容認論も出つつあった。首相はこうした事情も踏まえて公明案の受け入れを決め、30日夕に麻生氏から電話で再度説得されても押し切った。
 首相は、より幅広い合意形成を演出するため、最側近の木原誠二幹事長代理には維新との交渉を指示した。木原氏は5月中旬に一度、維新との交渉を頓挫させていたが、29日夜に維新の遠藤敬国会対策委員長の電話を鳴らし、「もう一回やりましょう」と依頼。遠藤氏が「(駆け引きで)行ったり来たりするならごめんや」とクギを刺すと、木原氏は「わかっています」と応じ、結果的に維新の主要な要求をほぼ全て受け入れた。
 首相の決断について、政府内では「世論の動向を考えればいい判断だった」との見方が出ている。だが、麻生氏周辺からは「これまで政権を支えてきたが、今後の対応は考えざるを得ない」との声が漏れるほか、「5万円超」容認派の中堅議員も、「首相の決断が遅かったため、党が迷走している印象が出てしまった」と語った。