規正法また採決延期、維新に振り回され深夜に迷走 自民内でも高まる不信と解散見送り論(2024年6月4日『産経新聞』)

 
会談に臨む自民党浜田靖一国対委員長(左)と立憲民主党安住淳国対委員長=4日午前、国会内(春名中撮影)

自民党政治資金規正法改正を巡り混乱に陥った。日本維新の会の要求に振り回された末、自民案の修正に追い込まれ、4日に予定していた衆院政治改革特別委員会での採決を先送りした。採決延期も法案修正も2度目だ。法案不成立なら政権が倒れかねない岸田文雄首相(自民総裁)が決断したが、二転三転ぶりに自民内でもガバナンス(統治)能力の欠如への批判が上がり、23日に会期末を迎える今国会での衆院解散の見送り論が強まっている。

「今日の日程は白紙にさせてほしい。大変申し訳ない」。自民の浜田靖一国対委員長は4日午前、立憲民主党安住淳国対委員長と会談し、陳謝した。

安住氏「迷走がひどい」

かつて党内ガバナンスの崩壊で自滅した旧民主党政権の幹部だった安住氏は、こう応じた。「さすがの民主党政権もここまでやったことはない。迷走がひどいのではないか」

最初の法案修正は公明党と維新の要望を受けたもので、政策活動費に関しては「領収書の10年後の公開」を決めた。自民・公明・維新が賛成という一部野党を取り込む形で衆院通過を図りたい首相の意向を受け、最側近の木原誠二幹事長代理らが調整に動いた。

しかし自民が3日に提出した修正案は、領収書公開の対象を「50万円超」の支出に限る規定を盛り込んでおり、維新が「賛成は難しい」(音喜多駿政調会長)と強く反発した。

慌てた首相サイドは3日夜、予定通り4日に衆院採決した上で、参院送付後に「50万円超」を削除する再修正を行う方針を固め、維新の了解も得た。しかし数時間後の同日深夜、4日に再修正して採決を延期する方針に転換した。所属衆院議員250人超の巨大与党が40人台の野党第二党に振り回される姿に、政権運営の苦境が表れている。

今国会の解散なら「岸田おろし」も

自民若手は「さんざん議論して党で自民案をまとめたのに、首相がひっくり返した。ガバナンスがめちゃくちゃだ」と嘆いた。国会運営を含む党務に責任を持つ茂木敏充幹事長が事態収束を主導した形跡は見えず、「機能していない」(重鎮)といった批判も目立つ。首相が、国会運営の担当ではない森山裕総務会長らに相談しながら、法案の扱いを自ら判断する状況は、異常といえる。

迷走ぶりを露呈し、内閣支持率の好転が見通せない中、首相が今国会での解散に踏み切ろうとすれば「岸田おろし」が起きる可能性も指摘されている。

自民中堅は「みんなで(首相を)羽交い締めにするだろう」と強調。党幹部の一人が4日「今は解散を打てる状況ではない」と語るなど、党執行部内にも早期解散論は見当たらない。(田中一世)