「岸田降ろし」最終局面へ〝麻生vs菅〟キングメーカーの最終戦争勃発か 最大の焦点は「持ち札」多い菅氏が誰を選ぶか
【ニュース裏表 平井文夫】 自民党内で、岸田文雄首相(総裁)の交代論が噴き出ている。派閥の裏金事件や、後手に回った政治資金制度改革、場当たり的な政権運営を受け、岸田文雄内閣の支持率は「危険水域」「退陣水域」から抜け出せないままだ。次期衆院選での下野もあり得る世論調査の結果を受け、「非主流派」のキーマンである菅義偉前首相だけでなく、「主流派」の麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長の周辺からも「岸田降ろし」といえる言動が顕在化してきた。「ポスト岸田」をめぐる「菅vs麻生」の最終戦争勃発か。フジテレビ特別解説委員の平井文夫氏は、9月の党総裁選をにらんだ駆け引きに迫った。
◇ 通常国会が閉会したその日(23日)に公開されたインターネット番組で、菅前首相が、岸田首相に対し、「事実上の退陣要求」と受け取れる発言を行った。自民党総裁の任期は9月30日なのだが、もう「戦いのゴング」は鳴ってしまったようだ。 菅発言に対し、党内からも「内輪もめは止めろ」という批判があるが、現状を見るに、こういう発言は出ない方が逆に不健全だ。歴代の首相はライバルを倒して首相の座をつかんできた。戦いに勝った強い人がリーダーになれば自民党も再生すると思う。
菅氏は政治資金問題について、「首相自身が責任に触れず今日まで来ている。不信感を持っている国民は多い」としたうえで、「このままでは政権交代してしまうとの危機感を持つ人は増えている」と述べた。
ただ、菅氏は誰を推すかについては「決めてない」と述べた。つまり「岸田首相は降ろすが、代わりはまだ決めてない」ということ。菅氏は「非主流派」を代表する立場にいるわけで、キングメーカーの一人である。 菅氏が「推すかもしれない人」はたくさんいる。
まず、前回の総裁選で推した河野太郎デジタル相、もともと関係が深い小泉進次郎元環境相、自身が首相時代に官房長官を務めた加藤勝信氏、それに世論調査ではいつも人気1位の石破茂元幹事長である。番組内では、この4人に加えて、主流派の茂木幹事長のことも菅氏は「ほめて」いた。 自民党の「常識」超えた過激な展開も
一方、「主流派」のキングメーカーは茂木氏とともに岸田首相を支えてきた麻生副総裁なのだが、政治資金をめぐって麻生、茂木両氏と首相との仲が冷えているらしい。
最近、若手の首相批判が相次いでいる。「岸田総裁がこの場(代議士会)に来て、あいさつすべきではないか」と言った津島淳衆院議員は茂木派、「責任は最終的に誰かがとらなければならない」と言った斉藤洋明衆院議員は麻生派である。選挙に不安な若手の焦りというよりは、両派による岸田首相への牽制(けんせい)と見る方が自然だ。
ただ、麻生氏が、岸田首相から茂木氏に乗り換えるというのも簡単な話ではない。岸田首相は納得しないだろうし、茂木派も一枚岩ではない。安倍派も乗ってくるのか分からない。これまでの自民党の「常識」だと、「非主流派」は菅氏が党内に広く支持を得られそうな加藤氏を選び、「主流派」は岸田首相が謝って麻生氏に許してもらい、そこに高市早苗経済安保相と若手が1人か2人出る、みたいな展開になるのだが、今が「政権を失うかもしれない有事」であるならば、もっと過激な展開になるかもしれない。
これは結構難しい判断だ。カギを握るのは、麻生、菅の両キングメーカーだが、菅氏の方が「持ち札」が多く、かつバラエティーに富んでいるので、菅氏が誰を選ぶかが最大焦点となるだろう。