旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたのは憲法違反として福岡県内の80代の夫婦が国に損害賠償を求めていた裁判で、福岡地裁は30日、手術を「違憲」と判断した上で「除斥期間」の適用を認めず、国に約1600万円の賠償を命じました。
原告は聴覚障害がある夫婦
この裁判は、ともに聴覚障害がある福岡県に住む70代の夫婦が、障害者に不妊手術を強制した旧優生保護法のもと約50年前に夫が不妊手術を受けさせられたのは憲法違反だとして、国に1人あたり2000万円の損害賠償を求めていたものです。夫は、提訴後2021年に亡くなりました。
除斥期間の適用「著しく正義・公平の理念に反する」
30日の判決で福岡地裁は、手術を違憲とした上で、損害賠償についても、不法行為から20年を過ぎると損害賠償を求めることができなくなる「除斥期間」の規定を適用せず、国の責任を認めて約1600万円の賠償を命じました。判決で上田洋幸裁判長は、「訴訟の提起に至るまでに時間を要したのは、長年優生手術を受けさせられたことに深い羞恥心や自責の念を抱える中で、優生手術を受けたことを公表した上、被告に対して責任追及するということに恐れや不安を感じていたことや、手話を日常使用するため原告と代理人らの意思疎通が通常よりも困難であったこと、夫が半身不随状態にあって自ら手話によって被害を伝えることが困難な状況にあったこと、2019年2月に夫が体調を悪化させ、その後入院していたこと等の理由があったと認められる。除斥期間の規定を適用し、当該権利を消滅させることには著しく正義・公平の理念に反するべきと言える」と指摘しています。
国のコメント
判決について、こども家庭庁は「今後の対応について、判決内容を精査し、関係省庁と協議した上で、適切に対応してまいります」とコメントしています。
聴覚障害を理由に不妊手術を強制、国に1640万円賠償命令…福岡地裁(2024年5月30日『読売新聞』)
旧優生保護法に基づき、夫が不妊手術を強制され精神的苦痛を受けたとして、福岡県内の女性(80歳代)らが国に約4400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、福岡地裁であった。上田洋幸裁判長は旧法を違憲と判断し、約1640万円の賠償を命じた。