日航トラブル続発 安全意識の再徹底進めよ(2024年5月30日『産経新聞』-「主張」)

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トラブルが続く中、接触した日航機の主翼の先端 =23日午前、羽田空港
 日本航空で運航の安全に関わるトラブルが相次いでいる。
 これを受け、国土交通省航空法に基づき日航事務所に臨時の立ち入り検査を実施した。27日には日航鳥取三津子社長を呼んで厳重注意し、再発防止策の提出を求めた。
 鳥取氏は厳重注意の後、記者団に対し「繰り返し不安全事象が起きていることに社長として責任を感じている。共通の要因が存在するとは思うが、しっかり分析して対策につなげたい」と述べた。
 航空機のトラブルは多くの人命を巻き込む重大事故に発展しかねない。日航は自らの責任の重さを自覚し、改めて安全意識の徹底を全社で図らなければならない。
 日航機を巡っては、1月に羽田空港で起きた海上保安庁機との衝突事故以降もトラブルが続いている。
 福岡空港では5月10日、日航機が誘導路の停止線を大幅に越えた。これにより離陸のため滑走中だった他機は緊急停止した。23日には羽田空港駐機場で日航機2機の主翼先端が接触するトラブルも起きた。
 トラブルは国内ばかりでなく海外でもあった。昨年11月と今年2月には管制官の指示を取り違えるなどして滑走路に誤進入したり、滑走路手前の停止線を越えたりした。短期間でこれだけのトラブルが続発するのは異常事態といっていい。
 中でも、福岡空港の事案は深刻だ。国交省によると、日航機のパイロットが管制官による停止の指示を正しく復唱していなかったという。管制官日航機の復唱内容に不十分な内容があると指摘しておらず、両者とも基本動作を怠っていた。
 羽田衝突事故を受け、国交省は復唱確認など基本動作の徹底を関係者に指示していた。管制官も含め安全意識がおろそかになっていたとすれば問題だ。関係者には猛省を求めたい。
 日航は羽田衝突事故で乗客に死者を出さず、国内外から称賛を受けた。業績も好調で事故による影響は感じられない。
だが航空機の運航では、わずかな気の緩みやヒューマンエラーが大事故につながる可能性がある。4月1日に社長に就任した鳥取氏はそのことを肝に銘じ、再発防止策の策定や安全意識の徹底に強いリーダーシップを発揮してほしい。