思ってもみない経験(2024年4月14日『』-「明窓」)

街頭演説を終え、SPらに囲まれ車に乗り込む岸田文雄首相=2023年10月、高知市


 思ってもみない経験をした。先日上京した際のこと。出雲空港の保安検査場を通過し、手荷物を元の位置に戻していると、「ピー」という金属探知機の電子音が次々に鳴り響いた

▼振り返ると、黒いスーツ姿の屈強そうな4、5人の男性がゲートを通過し、持ち場についた。要人を警護する警察官だろう。「誰が来るの?」。羽田空港から到着した航空機から真っ先に姿を見せたのが、自民党小渕優子選挙対策委員長。複数のSP(警護官)に誘導され、あっという間に見えなくなった。島根県連幹部らとの会合に出席するため来県したことは、後で知った

▼要人警護は「人の盾」となる重い仕事だ。岸田文雄首相が和歌山市の演説会場で襲撃された事件から、あす15日で1年を迎える。その前年夏に起きた安倍晋三元首相銃撃事件を受け、警護体制はより厳しくなっている。思ってもみない事態が起きてからでは取り返しがつかない

▼とはいえ、演説会場での物々しい警備は集まった人たちを威圧するだろう。金属探知機で「ピー」と反応すれば、冒頭の警察官のように無視することはできない

衆院島根1区補欠選挙が16日に告示される。21日には自民党総裁の岸田首相と立憲民主党泉健太代表が島根入りするという。事実上の与野党一騎打ちとして全国的に注目を集めている証し。思ってもみないことなのだが、事件などで「悪目立ち」はしたくない。(健)