旧優生保護法で不妊手術強制 国に賠償命じる 静岡地裁浜松支部(2024年5月27日『NHKニュース』)

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優生保護法のもとで不妊手術を強制されたとして、視覚に障害がある浜松市の75歳の女性が国に賠償を求めた裁判で、静岡地方裁判所浜松支部は、女性の訴えを認め、この法律が憲法に違反するとして国に賠償を命じました。
浜松市の武藤千重子さん(75)は、旧優生保護法のもと、視覚に障害があることを理由に1977年に不妊手術を強制されたとして、国に3300万円の賠償を求めていました。
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27日の判決で静岡地方裁判所浜松支部佐藤卓裁判長は、旧優生保護法憲法に違反すると判断し、「子どもを産みたいという希望や夢を理不尽にも奪われた原告の苦痛は甚大だ」と指摘しました。
その上で「手術から20年以上が経過し、賠償を求める権利がなくなる『除斥期間』が適用される」という国の主張については「国が障害のある人に対する社会的な差別や偏見を正当化し、助長したため、原告は訴えを起こす前提となる情報へのアクセスが著しく困難になっていた。『除斥期間』の適用をそのまま認めることは、著しく正義・公平の理念に反する」と指摘し、国の賠償責任を認め1650万円を支払うよう命じました。
全国で起こされている同様の裁判で、国の賠償責任を認める判決は今回で11件目です。
優生保護法をめぐっては、最高裁判所大法廷が上告されている5件について当事者の主張を聞く弁論を29日開き、この夏にも統一判断を示す見通しです。
こども家庭庁「適切に対応していきたい」
こども家庭庁は「今後の対応については判決内容を精査し、関係省庁と協議したうえで適切に対応していきたい」とコメントしています。
 

強制不妊、国に賠償命令11件目 地裁浜松支部除斥期間認めず(2024年5月27日『共同通信』)
 
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静岡地裁浜松支部前で「勝訴」などと記された紙を掲げる弁護士ら。右から2人目が原告の武藤千重子さん=27日午後
 旧優生保護法下で不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、視覚に障害がある浜松市の武藤千重子さん(75)が国に3300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、静岡地裁浜松支部は27日、旧法は違憲と判断し、国に1650万円の賠償を命じた。争点だった除斥期間の適用は「著しく正義・公平の理念に反する」と認めなかった。
 佐藤卓裁判長は判決理由で、旧法の規定は憲法13条が保障する子どもをもうける自由に「不合理な理由で制約を課すものだ」と指摘。法の下の平等を定める同14条にも違反するとした。
 同種訴訟は全国12の地裁・支部に起こされた。賠償を命じる判決が出たのは地裁段階では5件目、高裁段階を合わせると11件目。最高裁大法廷は29日、昨年6月までに言い渡された5件の高裁判決について上告審弁論を開く。今夏にも統一判断を示す見通し。
 訴状によると、武藤さんは小学生の頃から視力が低下。1967年に白内障と診断された。74年に結婚、77年に第2子出産後、視覚障害を理由に具体的な説明を受けずに不妊手術を強制された。

優生保護法訴訟 弁護団など最高裁訪れ要望(2024年4月26日『NHKニュース』)
 
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優生保護法のもとで、障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが国に賠償を求めている裁判が、5月に最高裁判所大法廷で開かれるのを前に、弁護団や支援団体が最高裁に被害回復につながる判決を求めました。
26日に最高裁を訪れたのは、全国で起こされた裁判の弁護団や支援団体などです。
弁護士たちは、
▽およそ32万人分の署名を提出して、被害回復につながる判決を求めたほか
▽手話通訳や点字の資料など、障害のある人が傍聴しやすい環境の整備も要望したということです。
戦後まもない1948年から1996年まで続いた旧優生保護法のもとでは、1万6000人以上が障害などを理由に不妊手術を強制されています。
最高裁判所は、不妊手術を強制された人たちが国を訴えている5件の裁判について、15人の裁判官全員による大法廷で審理することを決めていて、5月29日に弁論が開かれ、年内にも統一判断が示される見通しです。
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原告を支援する全日本ろうあ連盟の大竹浩司副理事長は「耳が聞こえない原告も多くいる。手話も言語なので大切にしてほしいと強く要望した」と手話で通訳を介して訴えました。
全国優生保護法被害弁護団の新里宏二共同代表は「国による極めて重大な人権侵害なので、賠償を求められる『除斥期間』を適用しない判断が出ると確信している」と話していました。