旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたとして、視覚に障害がある浜松市の75歳の女性が国に賠償を求めた裁判で、静岡地方裁判所浜松支部は、女性の訴えを認め、この法律が憲法に違反するとして国に賠償を命じました。
その上で「手術から20年以上が経過し、賠償を求める権利がなくなる『除斥期間』が適用される」という国の主張については「国が障害のある人に対する社会的な差別や偏見を正当化し、助長したため、原告は訴えを起こす前提となる情報へのアクセスが著しく困難になっていた。『除斥期間』の適用をそのまま認めることは、著しく正義・公平の理念に反する」と指摘し、国の賠償責任を認め1650万円を支払うよう命じました。
全国で起こされている同様の裁判で、国の賠償責任を認める判決は今回で11件目です。
こども家庭庁「適切に対応していきたい」
こども家庭庁は「今後の対応については判決内容を精査し、関係省庁と協議したうえで適切に対応していきたい」とコメントしています。
旧優生保護法下で不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、視覚に障害がある浜松市の武藤千重子さん(75)が国に3300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、静岡地裁浜松支部は27日、旧法は違憲と判断し、国に1650万円の賠償を命じた。争点だった除斥期間の適用は「著しく正義・公平の理念に反する」と認めなかった。
同種訴訟は全国12の地裁・支部に起こされた。賠償を命じる判決が出たのは地裁段階では5件目、高裁段階を合わせると11件目。最高裁大法廷は29日、昨年6月までに言い渡された5件の高裁判決について上告審弁論を開く。今夏にも統一判断を示す見通し。
弁護士たちは、
▽およそ32万人分の署名を提出して、被害回復につながる判決を求めたほか
▽手話通訳や点字の資料など、障害のある人が傍聴しやすい環境の整備も要望したということです。
原告を支援する全日本ろうあ連盟の大竹浩司副理事長は「耳が聞こえない原告も多くいる。手話も言語なので大切にしてほしいと強く要望した」と手話で通訳を介して訴えました。