「忘れ物注意」のアナウンス 早口でうるさいだけだ(2024年5月19日『毎日新聞』)

松尾貴史のちょっと違和感
キャプチャ
松尾貴史さん作
 東京と関西の往復をするとき、あまり飛行機を使わない。羽田から伊丹まで1時間程度とはいえ、自宅から空港への移動、空港から仕事先への移動、搭乗手続き、保安検査場の通過などのために早めに到着しておく必要性、天候による遅延や欠航のリスクなどを含めると、3時間ほどみておく必要がある。一方、新幹線の場合はそれらの手間が省けるため、こちらのストレスは小さい。そして全体でかかるのも3時間半ほどだから、飛行機とそんなに差はない。さらに新幹線の車内では原稿を書いたり、あるいは仮眠を取ったりすることもできる。東京―大阪間の飛行機では、それをする時間的余裕がなく、またスペース的に窮屈でもある。
 そんな新幹線のメリットを挙げたものの、執筆や安眠を阻んでくるのが騒音である。とは言っても、子どもの泣き声や携帯電話の通話などではなく、車内アナウンスのことである。「この列車はのぞみ◎号博多行きです」や「各停車駅の到着時刻は新横浜◎時◎分、名古屋駅◎時◎分……」などは、一応は確認したい人もいるであろうからよしとしても、「忘れ物をしないように」というような注意事項を、大音声で何度も何度も繰り返すのは…