◆左手で稽古、執念のリハビリで右手も動き「両利きの書家」に
「絆舞」の文字をけいこする三藤観映さん。右手で筆を握る=石川県七尾市で
三藤さんは東大寺仁王尊像修復で記念胎内経を書き、テレビ番組に書道講師として出演したこともある。2022年6月に脳卒中で倒れ、右半身不随に。4カ月の入院中、左手で稽古した。「執念でやった」というリハビリで右手が動くようになり「両利きの書家」となった。
揮毫するのは東日本大震災からの復興を願い、福島県の酒蔵が醸造する「絆舞」。全国の心を一つにしようと信用金庫のネットワークが取り組むプロジェクトで、47都道府県の米をブレンドする。試練を乗り越える強さを発信する三藤さんに、揮毫の打診があった。
日本の心を一つにする「絆舞」。能登に思い寄せる限定ラベルが販売される=曙酒造提供
◆「能登のみなさんに希望を」
寺は創建360年超。築160年余の本堂は地震で壊れて解体。再建の道筋は見えない。三藤さんは3カ月の避難生活を余儀なくされ、心労が重なる。「書家としてこの病気は残酷で絶望したが、はい上がった。地震も乗り越えられると信じる。能登の皆さんに希望を持ってもらうため、この右手で書く」(前口憲幸)