今年の春闘では、働き手の4割弱を占める非正規労働者の賃上げ回答が低調だった。大企業を中心とする大幅賃上げの波が、労働組合への参加率が低い非正規労働者には及ばず、無防備のまま物価高にさらされている形だ。
国や経済界は、賃上げから取り残された非正規労働者を置き去りにせず、支援する必要がある。
非正規支援に取り組む「非正規春闘実行委員会」によると、同委が賃上げ要求した107社のうち半数に近い48社が賃上げに応じない「ゼロ回答」だったという。5月上旬に実施したアンケート(251人回答)にも7割以上が「賃上げがなかった」と答えた。
もともと給与水準が抑えられている上に、賃上げの波からも取り残された非正規労働者の暮らしが深刻な状況に追い込まれていることは想像に難くない。働き手が1人の非正規世帯などでは、子どもの教育費や食費さえ削らざるを得ない例も多いのではないか。
ただ、リスキリングの効果が出るには時間がかかる。足元の物価高に苦しむ非正規世帯の家計支援には不十分だ。
経済を支えている非正規労働者が長く雇用の調整弁として扱われてきた。しかし、こうした非正規を軽視する雇用の在り方がもはや許されないことも、社会全体で共有したい。