教員の処遇改善 指導力の向上も忘れずに(2024年5月7日『産経新聞』-「主張」)

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教員確保策を話し合う中教審の特別部会=文科省
 
 公立小中高校などの教員の処遇改善策について中央教育審議会の特別部会が素案をまとめた。
 教員の長時間労働をめぐる問題で、残業代の代わりに月給に上乗せしている「教職調整額」を半世紀ぶりに見直すほか、働き方改革を進める。意欲ある人材が集まるよう教職の魅力を高める改革としてもらいたい。
 教職調整額は、授業の準備や放課後の指導など勤務時間の線引きが難しい仕事の特性に配慮した制度だ。昭和46年制定の教員給与特別措置法(給特法)により、基本給の4%を一律で上乗せしている。
 4%は、当時の平均残業時間(月約8時間)から算出された。素案はこれを「10%以上」に増やすとした。10%は月20時間程度の残業代に相当し、追加の公費負担は約2100億円が見込まれる。
 令和4年時点の残業時間は小学校教員が推計月約41時間、中学教員で約58時間に上る。残業時間に応じた引き上げの要望もあるが、限られた財源で青天井の残業代を求めても理解は得られまい。現実的方法で処遇改善を急ぐ必要がある。
 都道府県などが実施する公立学校の教員採用試験の平均競争率は5年度は3・4倍だ。平成12年度のピーク時13・3倍と比べ低下が著しい。
 団塊の世代の退職に伴い採用数が大幅に増えたのに対し、教員を志す成り手不足が指摘されてきた。実態に合った処遇改善は必要としても、給料を多少上げ、優秀な人材が集まるほど世の中は甘くない。
 教職はいま魅力ある職場か。学習は塾頼み、部活も外注、いじめや不登校で生徒指導も頼りにならないのでは、学校はなんのためにあるのか。若手に教職の場は魅力的に映らない。
 何より教員の専門的知識、指導力を鍛え、教職本来の学びの場の機能を再生することが肝要だ。素案では若手を指導する新たなポストを設け、職責に見合った給与を支給することが提案されたのはうなずける。
 寝食を忘れ子供と向き合う熱心な教員は少なくない。教材費や研修機会など意欲ある教員が腕を振るえるようさらなる施策を望みたい。
 漫然と教壇に立ち、忙しいと文句ばかり言う教員はもちろん退場を願いたい。