公立学校教員の働き方改革を巡り中央教育審議会が5月に出す提言の素案がまとまった。焦点の処遇改善では残業代の代わりに基本給に上積みする「教職調整額」を約50年ぶりに増やす。業務の削減と教員の定数増も進め、合わせ技で長時間労働の解消を図る。
現時点で実現可能性が高い施策を総動員した感がある。その姿勢はよいが「学校はブラック職場」というイメージを払拭するには力不足だ。文部科学省や自治体は素案の内容を着実に具体化しつつ、より根本的な改革を中期的に行う二段構えで取り組むべきだ。
素案は「業務の適正化」「学校の体制充実」「処遇改善」の3つをパッケージで打ち出した。行事の精選や事務のデジタル化で教員の仕事を授業中心に絞り込む。体制面では教員の定数を増やし、教職調整額を基本給の4%から2.5倍の10%以上に引き上げる。
いずれも前進だが構造的な課題への踏み込みが浅い。調整額は増やすが残業時間に応じて残業代を支払う仕組みへの抜本改革は見送った。10%の調整額は月20時間程度の残業に相当する。しかし、直近の推計で月平均の残業時間は小学校で約41時間、中学校で約58時間に達している。素案は将来的に月20時間程度に減らすとしたが明確な工程表を示すべきだろう。
学校の働き方の大きな問題は教員が授業に追われ、勤務時間内に教材研究や次の授業の準備を終えられないことだ。持ちコマ数に上限を設け、それを基準に教員を配置すれば空き時間が生まれる。教員の大幅増が必要だが、少子化で生まれる教員の余剰も生かして実現することを検討してほしい。
年間授業時間数の規定も見直し、少ない授業時間で効果を上げている自治体は裁量で減らせるようにしてはどうか。働き方改革と授業の革新が両輪で進むはずだ。
今月、東京都では約20の小学校が教員の欠員がある状態で新年度の始業を迎えた。教員不足は依然深刻で、その最大の被害者は子どもだ。対策の遅滞は許されない。