70歳までどうしても働かせたい日本政府…絶望しないために知っておくべき「老後の実態」(2024年5月6日『現代ビジネス』)

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 年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。
 
 10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。

70歳まで働かせたい政府
 多くの人が知るように、日本政府はできるだけ長く働く人を増やすような政策・方針をとっている。
 〈2021年4月に施行された高年齢者雇用安定法では、現状義務化されている65歳までの雇用確保に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するための高年齢者就業確保措置が企業の努力義務とされた。
 ここでは雇用の提供というこれまでの選択肢に加え、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の創設などの選択肢も提示されている。
 同改正法は、雇用であれ、業務委託であれ、70歳までの従業員の生活を保障してほしいという政府から企業への要請となっている。〉(『ほんとうの定年後』より)
定年後の収入と働き方
 定年後、年収はどれくらいになるのか? 
 〈60歳以降の就業者全体の年収分布をみていくと、60代前半では平均収入は357万円で、上位25%所得は450万円、収入の中央値は280万円となる。
 60代後半に目を移すと平均額は256万円まで下がり、上位25%所得は300万円、中央値が180万円まで下がる。
 定年後の就業者の収入の実態を探っていくと、300万円以下の収入の人が大半であることがわかる。〉(『ほんとうの定年後』より)
 では、どのように働くかといえば、大多数は非正規やフリーランスになる。
 〈非正規雇用者が占める割合は50代前半時点では数%にすぎないが、60代後半にはパート・アルバイトで13.6%、契約社員等で12.9%と、定年後の最も一般的な働き方に変わる。〉
 〈フリーランスは実は定年後の現実的な働き方の一つの形態である。
 ここでは、自営(雇人なし)を広くフリーランスとみなすと、フリーランスの働き方は50代前半では6.4%と少数派であったが、50代後半で7.4%、60代前半で8.4%、60代後半で10.9%まで増える。
 そして、70代前半では就業者のうちフリーランスの人は約2割で、最も多い働き方になる。〉(『ほんとうの定年後』より)
 
仕事の負荷は減り、仕事に満足する
 長く働くことに対してネガティブな人もそれなりの数いるだろう。
 それでも、仕事の負荷は減り、仕事に満足している人も増えていく。
 〈自身の能力に照らして仕事の負荷が適切であると感じる人の割合は20代で54.5%、30代で56.2%、40代で54.3%と横ばいで推移した後、50代前半の60.9%から60代後半で71.0%まで上昇する。
 これは仕事の負担が重すぎると考える人の割合が減るからである。仕事の負荷が過大であると回答した人は、40代の31.8%をピークに、70代前半の8.3%の水準まで下がり続ける。〉
 〈50代以降、仕事の負荷が低下していくことによって、能力と仕事負荷のバランスが適正化し、多くの人にとって仕事は心地よい水準に調整されていく。
 実際に、仕事の満足度と、能力と仕事負荷のバランスとの関係性をみると、その相関関係は非常に強い。バランスが適切だと感じている人ほど、仕事に満足して働けている人が多いのである。〉(『ほんとうの定年後』より)
 誰にも正解がわからない人生100年時代。
 不安を安心に変えるために、まずはデータから実態をつかんでおきたい。
 
現代新書編集部
ほんとうのその後 「小さな仕事」が日本社会を救う (箱根現代新書) ( ペーパーバック 新書 – 2022/8/18 )
坂本 貴志(著)
 
稼ぎは300万円以下、本当に稼げるのは月10万円、50代で仕事の意義を理解し、60代管理職はごく少数、70代男性の慎重率は45%、80代検討者の約9割が自宅近くで働く……全会社員必読!知ざるその後の「仕事の現場」とは?
 
とりあえずした不安を乗り越え、豊かで自由に生きるにはどうしたらいいのか。豊富なデータと事例から見えてきたのは、「小さな」に取り組む人が増え、多くの人が仕事に満足しているという「幸せな収入後の生活」だった。日本社会を救うのは、「小さな仕事」だ!
【目次】
第1部非終了後の仕事「15の事実」
事実1 収益は300万円以下が大半の
事実2 生活費は月30万円弱まで低下する
事実3 収益相応は月60万円相当月10万円に
事実4 減少する退職金、増加する初期退職
事実5 純貯蓄の中央値は1500万円
事実6 70歳男性慎重率45.7%、働くことは「当然」
事実7 高齢化する企業、60代管理職は極少数の
事実8 多数派を占める非正規とフリーランス
事実9 厳しい50代の転職市場、転職しても軽視は軽減
事実10 デスクワークから仕事への
事実11 60代からの能力低下を認識する
事実12 負荷が下がる、ストレスから解放される
事実13 50代で就労観は一変する
事実14 6割が仕事に満足、幸せな売却後の生活
事実15 経済とは「小さな仕事の積み重ね」
第2弾「小さな仕事」に確かな意義を感じるまで
事例1 再就職先で一プレイヤーとして活躍
事例2 週末勤務で会社を支える
事例3 包丁研ぎ職人を目指して独立
事例4 近所の学校で補助教員として働く
事例5 同僚、患者との意見を楽しむ
事例6 幕僚監部から看護師寮の管理人に
事例7 仕事に趣味、人生を謳歌する
第3部 「小さな」の積み上げ経済
1. 進歩後も働き続ける人に必要なこと
2.高齢社員の人事管理をどうするか
3.労働供給時代における経済社会のあり方設計