2024年4月4日、連合は2024年春季労使交渉(春闘)における回答の第3回集計結果を公表。
【円グラフ】50歳代・二人以上世帯の「貯蓄分布」と平均・中央値はいくら?(出所:
組合員数300人未満の中小組合では基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率が平均4.69%をマークするなど、過去の最終集計と比べると1992年以来の高水準となりました。
とくに40歳代~50歳代は生涯の中でも年収が高くなりやすく、そこに今年の動きが重なれば大幅な収入アップが見込めるかもしれません。
そうして収入が増えれば、貯蓄に回すか、生活費に充てるか、しっかり吟味する必要があるでしょう。
貯蓄額の目標を立てる際に目安となるのが、同年代の貯蓄額。自分と同年代の周囲がどれくらい貯蓄を保有しているかを知ることで、具体的な貯蓄の目標金額を決めやすくなるでしょう。
今回は金融広報中央委員会の資料をもとに、50歳代・二人以上世帯の貯蓄額をみていきます。記事後半では「老後の要点」を紹介し、現在の60歳代が受給している年金額を「年齢別一覧表」でチェックしていきましょう。
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【50歳代・二人以上世帯】「貯蓄700万円未満」は6割…分布は?
50歳代・二人以上世帯で「貯蓄700~1000万円未満」の人はどれくらいいるのでしょうか。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」より、50歳代・二人以上世帯の貯蓄事情を確認します(金融資産を保有していない世帯を含む)。
●【50歳代・二人以上世帯】貯蓄700万円~1000万円未満の割合
・5.5%
●【50歳代・二人以上世帯】貯蓄700万円未満の割合
・60.0%
●【50歳代・二人以上世帯】「平均貯蓄額」と中央値
・平均:1147万円
・中央値:300万円
貯蓄700万円~1000万円未満は5.5%、貯蓄700万円未満の割合でみると60.0%となりました。
定年が見えてくる50歳代で貯蓄額のピークを迎える世帯も多く、定年退職後から「貯蓄の切り崩し」に突入する人も見受けられる現代シニア。
60歳代夫婦世帯の平均貯蓄額と中央値とも見比べてみましょう。
【60歳代の夫婦世帯】平均貯蓄額はいくら?中央値との差は約1300万円に
同じく、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」より、60歳代・二人以上世帯の貯蓄事情を確認しましょう(※金融資産を保有していない世帯を含む)。
●【60歳代・二人以上世帯】平均貯蓄額と中央値
・平均:2026万円
・中央値:700万円
上記を見ると、60歳代の平均貯蓄額は以前「老後2000万円問題」で話題となった2000万円を超えています。
しかし、平均は一部の富裕層に影響されるため、より実態に近い中央値をみると約1300万円も下がり、700万円となっています。
金額ごとに見ると貯蓄ゼロが約2割の一方で、3000万円以上も同じく約2割。50代よりもやや3000万円以上の割合が多いものの、依然貯蓄格差が大きい様子がわかります。
次の章からは、50歳代が知っておくべき「老後の要点」として、現代の60歳代が年金をいくら受給しているのか「年齢別一覧表」で確認していきましょう。
50歳代が知っておくべき「老後の要点」3つ
つづいて、50歳代が老後に向けて知っておくべきこと3つを紹介します。
●「老後の要点:1」老後にかかる医療費はいくらか
老後の要点1つ目は、老後にかかる医療費です。
厚生労働省「医療保険に関する基礎資料」によると、患者が負担する年間の平均医療費は以下のとおりです。
【年齢別】年齢:1人当たりの年間医療費(患者負担分)
・65~69歳:8万2968円
・70~74歳:7万664円
・75~79歳:6万4843円
・80~84歳:7万3529円
・85~89歳:8万492円
・90~94歳:8万3471円
・95~99歳:8万1185円
・100歳~:7万6506円
年齢によって差はありますが、年間で約8万円の医療費がかかります。
ただし、医療費は所得によって負担割合が異なる仕組みのため注意が必要です。
75歳以上の人は原則1割負担ですが、所得が多ければ負担割合が2割、3割と増えます。医療費の負担割合が多い人は、上記の金額よりも負担額は大きくなる可能性が高いといえるでしょう。
●「老後の要点:2」介護施設の費用はいくらか
老後の要点2つ目は、介護施設にかかる費用です。
自分一人での生活が難しくなると、老人ホームなどの介護施設への入所を検討する人もいるかと思います。
施設や地域、サービスなどによって費用に差がありますが、月10万円以上の費用がかかることも珍しくありません。
自分が住んでいる地域や、老後の住まいとして気になる場所がある場合には、早めに情報収集をしてもよいでしょう。
●「老後の要点:3」セカンドライフ収入の柱・年金受給額はいくらか
老後は、生活費にくわえて医療費や介護施設費用などが発生しますが、もらえる年金はどのくらいなのでしょうか。
2024年度の年金額の例(国民年金と厚生年金)月額
・国民年金(満額):6万8000円(+1750円)
・厚生年金※:23万483円(+6001円)
現役時代に会社員や公務員として働いた厚生年金受給者はある程度の年金をもらえますが、自営業者などの国民年金のみ受給者がもらえる年金は少額となっています。
それでは、シニアの入口ともいえる60歳代の平均年金受給額を一覧表で確認しましょう。
【年齢別】年金一覧表で60歳代シニアの平均受給月額をチェック
厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、60歳代が2022年度末時点で実際に受給している年金の平均額は次のとおりです。
●【60歳代】厚生年金の受給権者数と平均月額
・60歳:9万4853円
・61歳:9万1675円
・62歳:6万1942円
・63歳:6万4514円
・64歳:7万9536円
・65歳:14万3504円
・66歳:14万6891円
・67歳:14万5757円
・68歳:14万3898円
・69歳:14万1881円
※国民年金を含む
65歳未満の厚生年金保険(第1号)の受給権者は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢の引上げにより、主に定額部分のない、報酬比例部分のみの者となっています。
一般的な年金受給開始年齢である65歳以降をみると、年齢があがるにつれ平均月額が上がっています。平均で月額14~16万円台となっていることがわかるでしょう。
●【60歳代】国民年金の受給権者数と平均月額
・60歳:4万2616円
・61歳:4万1420円
・62歳:4万3513円
・63歳:4万3711円
・64歳:4万4352円
・65歳:5万8070円
・66歳:5万8012円
・67歳:5万7924円
・68歳:5万7722円
・69歳:5万7515円
まずは、自分がもらえる年金額を知る必要があります。年金額は、日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」を確認してみましょう。
ねんきん定期便は、毎年自分の誕生日の頃に送られてきます。50歳未満の方の場合、ねんきん定期便にはこれまでの加入実績に応じた年金額が記載されているので、年金額を確認する上で参考になります。
年金はシニア生活の収入の柱といえますが、一本で生活費すべてをまかなうのはやや厳しいかもしれません。多くの方が貯蓄を切り崩しての老後生活となるとわかります。
次の章からは「65歳以上の夫婦のみ無職世帯」の家計を見ていきましょう。
平均的な「65歳以上の夫婦のみ無職世帯」、家計収支は月「約4万円」の赤字
●65歳以上無職世帯の家計収支
実収入:24万4580円
うち社会保障給付:21万8441円
消費支出:25万959円
・うち食料:7万2930円
・うち光熱・水道:2万2422円
・うち保健医療:1万6879円
・うち交通・通信:3万729な円ど
非消費支出:3万1538円
月の収支:▲3万7916円
総務省「家計調査報告 家計収支編2023年(令和5年)平均結果の概要」より、平均的な「65歳以上の夫婦のみ無職世帯」を見ると、平均的な収入は約24万円。そのうち、夫婦での年金収入は21万8441円でした。
つぎに支出を見ると、食費は月約7万円。食費と光熱・水道費用で約10万円。また、老後も税金や社会保険料を支払う必要があり、夫婦で約3万円とわかります。
これらを計算すると、平均的な「65歳以上の夫婦のみ無職世帯」の赤字は約4万円。65~90歳までの25年間おなじ状況がつづくと仮定すると、1200万円にものぼります。
単純な試算にはなりますが、60歳代の貯蓄の中央値は700万円と考えると、どうでしょうか。すこしでも貯蓄に不安を抱えている方は、はやめの対策が吉といえるかもしれません。
まだ間に合う! 2024年は計画的に「老後資金」を貯蓄しよう
確実な貯蓄には、毎月の給料や収入から一定額を先に貯蓄し、残りのお金で生活していく「先取り貯金」が効果的です。
先取り貯金にはさまざまな種類があり、預貯金だけでなく積立投資もその一つ。元本割れなどの投資リスクはありますが、2024年は新NISAスタートの年として盛り上がっているのも事実です。
貯蓄の一部に、新NISA制度を利用して積立投資をはじめるのも選択肢の一つとなるでしょう。
これを機に、2024年のご家庭に合った貯蓄方法について考えてみてはいかがでしょうか。
● 【参考】50歳代・二人以上世帯の貯蓄額一覧表(金融資産を保有していない世帯を含む)
・金融資産非保有:27.4%
・100万円未満:9.1%
・100~200万円未満:6.4%
・200~300万円未満:3.8%
・300~400万円未満:3.9%
・400~500万円未満:3.8%
・500~700万円未満:5.6%
・700~1000万円未満:5.5%
・1000~1500万円未満:8.9%
・1500~2000万円未満:4.2%
・2000~3000万円未満:5.4%
・3000万円以上:11.2%
平均:1147万円
中央値:300万円
参考資料
・連合「中堅・中小組合が健闘! 高水準の回答が続く! ~2024 春季生活闘争 第3回回答集計結果について~」
・金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
・厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
・厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
荒井 麻友子