「”吉村知事の万博”に見える」来年の大阪・関西万博 大阪府・吉村知事の”迷言”は「疲れと協会の発信不足」府政関係者が記者に語った”ウラガワ”(2024年5月6日『MBS毎日放送ニュース』)

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大阪府吉村知事(4月22日)
 
  開催まであと1年をきった大阪・関西万博。しかし、会場建設費や運営費が増えたり、“万博の華”と呼ばれる海外パビリオンの建設が遅れるなど、課題は山積みです。そんな中、万博を推進する立場である、大阪府の吉村洋文知事の「発言」に注目が集まっています。批判につながる発言もある中、府政関係者が語った”見立て”とは・・・。
 
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目玉の部分など傷が付いたミャクミャクの様子は?
「ミャクミャク」破壊は”反対派の仕業”?
大阪市役所の正面玄関前に置かれている、万博の公式キャラクター「ミャクミャク」のモニュメント。去年11月に設置され、幅約3.3m、高さ約2m、623万円あまりの予算がかけられています。
 その「ミャクミャク」像に、3月13日の朝、何かでえぐられたような大きな傷がついているのが見つかりました。大阪市は故意に傷つけられたとみて、すぐに警察に対し器物損壊の疑いで被害届を提出。そして、吉村知事はこの日このように発言しました。
大阪府 吉村洋文知事)
「万博に対して反対の意見というのがあったとしても、こういった暴力行為、犯罪行為はぜひ控えていただきたいと思います」
 これに対し、記者から・・
(記者)
「まだ反対している人がやったかどうか分かっていないのでは?」
大阪府 吉村洋文知事)
「公共物において、ああやって、すごく強い意志がないと、なかなかあそこまでの傷をつける行為っていうのはできないと思います。もちろんどういった方がやったかはわからないけども、普通に考えたらミャクミャクっていう万博の象徴ですから、万博に対してよく思ってないという意図があった可能性が高いですよね。どういった方が犯人かは分かりませんけど、そういったことはやめてもらいたいと思います」
 「万博に対して反対の意見があったとしても」と、犯行を反対派だと決めつけるかのような発言をし、直後に「どういった方が犯人かは分かりませんけど」と”予防線”を張った吉村知事。
捜査の結果「酒飲み終電逃し…イライラ」していた男性を書類送検
では、警察による捜査の結果はどうだったのか。約1か月後の4月19日、警察は大阪・寝屋川市の男性を器物損壊の疑いで書類送検しました。男性は、「ミャクミャク」のモニュメントを近くにあった立て看板で複数回叩いて傷をつけた疑いが持たれています。そして、警察の調べに対し、次のような趣旨の話をしたということです。
書類送検された男性 ※警察の調べに対し)
「傷つけたことは間違いない。当時酒を飲んで終電を逃して、イライラしていた」
 少なくとも、直接の犯行動機に「万博に反対していたかどうか」は関係無かったことが明らかとなったのです。この結果に吉村知事は・・・
大阪府 吉村洋文知事 4月22日の囲み取材)
「僕自身が、もちろんその可能性もあるけれども、酔っ払いの可能性もあるし、どういう可能性か断定はできないけれども、どんな理由があってもこれは犯罪は駄目だというのが申し上げたところです。ですので、断定したものでもないし、その可能性すら触れるなというのは僕はちょっと違うんじゃないかなと思ってます」
民放番組で「万博の運営費が赤字なら”府と市で負担”」 考えを否定するも・・・
物議をかもした発言は他にも。4月21日、民放のテレビ番組で、コメンテーターの弁護士・橋下徹氏から、万博の運営費で赤字が出たとしても、府や市の”貯金”(財政調整基金)から補填する考えについて問われた吉村知事は・・・
※下記は番組での発言を起こしたもの
橋下徹氏)
「3兆円の経済効果と大阪に対する経済効果ってことを考えたときに、もう吉村さん、このお金(財政調整基金)使ったらいいじゃないですか。最後は」
(吉村知事)
「そう。だからもし、1160億円の予算がかかると。経済界は700万枚買うというふうに言ってますから、もうそれで500億円ぐらい確保できてるんですね。なのでそう考えると、もし赤字が出た場合には、橋下さんがおっしゃる通り、大阪府市で負担するという考え方はあると思います。でもそのときは黒字も大阪府市が全部もらいますよ。でもそれがいいんですかというと僕はそうじゃないと思うんですよ」
発言の真意は?吉村知事「番組内で明確に否定した」
吉村知事は、「万博は国家プロジェクトであって、大阪府や市が赤字を負担するのは筋が違う」と否定したものの、一言、「そう」と応じた吉村知事の発言は橋下氏の考えに少し同調したようにも取れます。翌日、記者からこの発言の真意を問われた吉村知事は、「番組内で明確に否定している」としたうえで・・・
(吉村知事)
「僕自身が思うのは、やはり赤字が出た場合にどうするのか、また黒字が出た場合にどうするのか、そういったことについて一定の時期が来ればきちんと議論して、方向性を定めるべきだと思います。それは国、大阪府・市、経済界、この3者が責任を持って進めてるわけですから、ここで僕は、一定の時期、万博開幕までの適切な時期に僕は一定協議をするべきだろうというふうに思っています」
チケット収入によってまかなわれる万博の運営費。協会の中に”出”の部分を管理するポジションを置いたり、国で執行状況をチェックする機関を設けたりするなど、運営費の支出が増えないように監視しているとしつつ、”入り”の部分、チケット収入を増やすべく機運醸成に取り組む、との考えを示しました。
大阪府幹部「ミャクミャク事件は決めつけ」知事に「疲れ出ている」
一連の吉村知事の発言を、府の幹部はどのように受けとめているのでしょうか。まずは、ミャクミャクが損壊された事件について。
(府幹部)
「あれは決めつけ。はじめ話を聞いた時、どう考えても『酔っ払いやろ』と思った。”サラリーマンが無性にイライラして、酒飲んで発散したい”みたいな、ああいう気持ちが知事はあんまり理解できへんのやと思う」
また、万博運営費の赤字負担について言及した点については。
(府幹部)
「ちょっと橋下さんの発言を肯定した部分があったでしょ?あれでは(その後に否定しても)伝わらんって。」
「赤字の話は(言及するのは)早すぎる。今やらなあかんことは、どうやって入場券収入を稼ぐかということ。1400万枚は前売りで稼がなあかんのやろ?うち700万枚は経済界が買ってくれた分で、じゃあ残り700万枚どうやって買ってもらうのか。今の状況で700万枚も買ってくれると思うか?そこを改善するようなやり方を考えんと」
こうした一連の”迷言”の背景は、「疲れ」と「協会の発信不足」だと指摘しました。
(府幹部)
「完全に疲れが出てる。まあ本人的にも、ここまで万博の批判がずっと続くと思ってへんかったと思う。(知事が協会内で就いている理事・副会長職は)協会のやったことの承認をする立場やから、細かいことまで彼は分からんのよ。それが、何度も囲みの場で叩かれて、”吉村知事の万博”みたいになってしまう」
「例えば愛知万博やったら、トヨタ奥田碩会長(当時)が愛知の威信をかけて取り組みはった。70年万博は石坂さんという当時の経団連の会長が万博成功に向けて頑張った。そやけど、今回の会長はお飾りになってしまってて、事務総長の石毛さんは根っからの役人。今回の万博はほんまに”顔”が無い。石毛さんも知事くらい毎日囲みやったらいい。ほんで、今日の進捗状況はこうです、新しい話はこうですってやった方がいい」
さらに、今後起こるであろう懸念を口にしました。
(府幹部)
「懸念しているのは、チケットの買い方があまりにも複雑すぎること。秋ぐらいに来場予約とかできるようになって、その頃になったら海外パビリオンとかも展示内容を言うようになってきて、そしたら『万博行ってみようかな』って思う人も出てくるかもしれへん。そんな人が、あんな複雑なチケットの買い方やられたら、『どうせテレビでやるからええか』って思われる」
課題ばかりの万博。世間を盛り上げながら、果たして無事に開幕を迎えられるのでしょうか。