選挙後も小池都知事らの自宅前で「街宣」 SNSで住所情報募る つばさの党選挙妨害事件(2024年5月18日『産経新聞』)

キャプチャ
衆院東京15区補選で街頭演説をするつばさの党の黒川敦彦容疑者(右)と出馬していた根本良輔容疑者=4月25日午後、東京都江東区
衆院東京15区補欠選挙を巡る政治団体「つばさの党」による選挙妨害事件で、公職選挙法違反(自由妨害)容疑で逮捕された党代表、黒川敦彦容疑者(45)らが、選挙後も小池百合子都知事ら複数の個人宅周辺で拡声器を使って大音量で怒鳴るなどの行為を繰り返していたことが18日、捜査関係者への取材で分かった。警視庁捜査2課は特別捜査本部を立ち上げ、実態解明を進めている。
黒川容疑者や同党から出馬して落選した幹事長、根本良輔容疑者(29)ら3人は、補選の投開票がされた4月28日以降も「抗議街宣」と称して、小池氏や同党に批判的な発信をした著名人らの自宅周辺に押しかけ、大音量で怒鳴るなどの行為を繰り返した。自宅住所は交流サイト(SNS)で情報を募って特定していたとみられる。
5月13日に警視庁が事務所などの家宅捜索を行った後は、警視庁本部庁舎前にも押しかけ、大音量で怒鳴り続けた。
選挙後も続いたこうした行為について警視庁には複数の相談が寄せられており、恐怖心を与える狙いもあったとみて、「悪質性が極めて高い」と判断。自由妨害の疑いと合わせて、事実確認などを進めている。
小池氏は3人が逮捕された17日の記者会見で、「多くの方が一連の行動に憤りを感じておられると思う。候補者が命の危険を感じる選挙はあり得ない」と述べた。
3人は共謀して補選告示日の4月16日、無所属新人の乙武洋匡氏(48)陣営の街頭演説中、演説に重ねるように大音量で主張を訴えるなどして選挙活動を妨害した疑いで5月17日に逮捕された。
 
都知事選への立候補表明、狙いはネット視聴と逮捕回避か「つばさの党」黒川容疑者ら(2024年5月18日『産経新聞』)
 
キャプチャ
「つばさの党」の黒川敦彦容疑者=17日午前、警視庁
公職選挙法違反(自由妨害)容疑で逮捕された政治団体「つばさの党」代表、黒川敦彦(45)と同団体幹事長、根本良輔(29)両容疑者は衆院東京15区補選の最中に7月の東京都知事選への出馬表明を行っていた。補選同様、都知事選でも過激な活動のインターネット配信を行って世間の注目を浴びるだけでなく、候補予定者となることで警察の捜査・逮捕を回避しようとした可能性がある。
補選期間中の4月25日、街頭活動の合間に江東区内で会見を行った両容疑者は都知事選に出馬する考えを明らかにした。
「(都知事選出馬で)すごいことになる」
会見でこう語った根本容疑者。つばさの党として両容疑者を含む50人を擁立して都内のあらゆる場所に選挙カーを走らせ、小池百合子都知事ネガティブキャンペーンを展開すると宣言した。
出馬表明の背景にはインターネットで動画の再生数を稼ぎ収益化につなげる考えがあったとみられる。交流サイト(SNS)などで自身の活動を積極的に発信していることについて、黒川容疑者は「広告収入を得ることが狙いではない」と反論。だが、活動の中では、ネットの反応を常に気にする姿があった。
警視庁が関係先を家宅捜索した今月13日夕、両容疑者らはSNSで予告した上で小池氏の自宅周辺に出向き抗議活動を行った。その際のネット中継では同団体運動員の杉田勇人容疑者(39)が「8万1千(人)見てますから」などと喜びを隠せない様子だった。
黒川容疑者は、補選の選挙期間中、逮捕容疑となった妨害活動に対して警視庁による警告にとどまったことから、「選挙運動に対する妨害になるから、警察は候補者を逮捕できない」と独自の主張を展開。その上で、都知事選への立候補表明について、産経新聞の取材に「逮捕を回避するため。候補予定者になれば警察は手出しをできない」と明かしていた。(大泉晋之助)