イギリス地方選で与党・保守党が大敗、支持率最低レベル…14年ぶり政権交代が現実味(2024年5月6日『読売新聞』)

 【ロンドン=蒔田一彦】英国で2日行われた地方選で、スナク首相率いる与党・保守党は大敗を喫した。保守党の支持率は過去最低レベルまで落ち込み、年内に行われる見通しの総選挙では2010年以来14年ぶりの政権交代が現実味を帯びてきた。

労働党が躍進

 今回の地方選は、イングランドの107自治体の議会選と11の市長選が行われ、総選挙の前哨戦として注目が集まった。

 英BBCによると、日本時間5日夜までに議会選は全107自治体で開票を終え、保守党は現有989議席の半分近くにあたる474議席を失った。過半数を占める自治体は10減となった。一方、獲得議席トップの労働党は186議席増やし、過半数を占める自治体は8増となった。保守党の獲得議席自由民主党を下回り、3位に沈んだ。

 労働党のキア・スターマー党首は4日、「我々が保守党政権に送るメッセージは明確だ。我々はあなたたちの分裂や混乱、失敗にうんざりしている」と語気を強めた。保守党の地盤でも得票を伸ばした選挙結果を受けて「我々は有権者の信頼と信用を得た。総選挙に向けて前進している」と自信をのぞかせた。

国民の不満

 市長選は労働党がロンドンを含む10市で勝利し、保守党は1市で現職が再選を果たしただけだった。史上初の3選を決めたロンドンのサディク・カーン市長は4日の勝利演説で「労働党は再び政権を担う用意ができている。スナク氏は国民に選択肢を与える時だ」と述べ、総選挙の早期実施を求めた。

4日、ロンドン市長選で3選を決め、演説するカーン氏=AP
4日、ロンドン市長選で3選を決め、演説するカーン氏=AP

 14年間、政権与党の座にある保守党の支持率は、1か月余りで退陣を余儀なくされたリズ・トラス前政権下で急落して以降、低迷が続く。

 英調査会社ユーガブが2日に発表した最新の世論調査結果では、保守党の支持率は18%にとどまり、労働党の44%に大きく離されている。2020年の欧州連合(EU)離脱後、自由に経済政策や移民対策を展開できると期待されたが、経済の低迷や移民の増加が続き、国民の不満が高まっていた。

降板求めず

 しかし、地方選を巡り、スナク氏は4日付英紙テレグラフの寄稿で「労働党は(下院で)過半数を取るために必要だとしている場所で勝てていない」と指摘した。経済や移民問題、防衛などで保守党の政策は効果を上げている一方、労働党には具体策が欠けていると主張し、次期総選挙は「プランのある党とプランのない党の対決だ」と訴えた。

 保守党内では「スナク降ろし」の動きも高まっていない。強硬派の代表格であるスエラ・ブラバーマン前内相は5日のBBCで、選挙結果について「スナク氏の決断の結果であり、責任を負わなければならない」としつつ、総選挙前の党首交代は「十分な時間がない」と否定的な見方を示した。

 スナク氏は今年後半に解散総選挙を行うとしており、米大統領選直後の11月が有力視されている。スナク政権は7月に不法移民のルワンダ移送を始め、秋には減税を含む予算案を発表して国民の支持を得たい考えだが、支持率のV字回復は困難とみられる。