乱戦の衆院東京15区補選!過去の得票数から情勢を分析
YouTube「選挙ドットコムちゃんねる」では、毎週選挙や政治に関連する情報を発信中です。 2024年4月8日に公開された動画のテーマは「候補者乱立!どうなる衆院東京15区補選!」 4月16日に告示される、衆院東京15区補選の構図が見えてきました。東京都の政治と選挙に精通した選挙ドットコム編集部の鈴木邦和と伊藤由佳莉が、4月8日収録時点での票読みなどの状況を、詳しくお伝えします。 【このトピックのポイント】 ・東京15区、8人が出馬表明で今回も乱立模様 ・保守系の基礎票はどのくらい?カギは公明と都ファか ・維新+共産で約6万票だが……
岸田政権の今後を占う、東京15区補選の顔ぶれは
4月8日時点で、東京15区補選に立候補が予想される顔ぶれは8名です(※収録時点では9名でしたが、その後、小堤 東氏・日本共産党の出馬取り下げが発表されました)。 ・金沢 結衣氏(日本維新の会) ・飯山 陽 氏(日本保守党) ・吉川 里奈氏(参政党) ・秋元 司 氏(無所属) ・須藤 元気氏(無所属) ・酒井 菜摘氏(立憲民主党) ・根本 良輔氏(つばさの党) ・乙武 洋匡氏(無所属) (出馬表明順です)
前回(2022年)の衆院選も立候補者7名で多いといわれていましたが、今回はさらに増えています。いろいろな政治勢力が集まった東京15区ですが…… 東京15区では、今年の統一地方選から始まった江東区長選をめぐる贈収賄事件があり、区長選も再選挙となりました。 そして、今回の補選は、この贈収賄事件に関与した元衆院議員の柿沢未途氏(前法務副大臣)が逮捕されたことでの辞職に伴うもので、「政治とカネ」の問題がぎゅっとつまった選挙になります。 そして、「政権の通信簿」とも呼ばれる衆院補選。今回の衆院補選では東京15区のほか、島根1区と長崎3区でも補欠選挙が行われます。 しかし、政権与党である自民党は、長崎3区では出馬せず、島根1区も苦戦しているという情報がささやかれています。 MC鈴木邦和「もし東京15区で自民党が負けるとなると、岸田政権に……」 MC伊藤由佳莉「大打撃となる」 このように、政権の基盤を揺るがす可能性があり、東京15区が政局的に重要な選挙区であると考えられます。
まだ情勢調査が出ていない状況ですが、選挙ドットコムでは、現時点での構図と票読みを予想します。 与党側は、乙武洋匡氏が無所属で出馬を表明しました。 乙武氏は、ご自身の出馬会見で、都民ファーストの会の推薦を申請するとのこと。そして、自民党も推薦する方向との報道です。(8日時点未決定) ポイントとなるのは、公明党。推薦を出さず、自主投票の模様。 MC鈴木邦和「乙武さんは、通常の与党候補と違い、ファーストの会が入っているけれど、公明党が一歩引いているみたいな状況になっているということですね」 野党側は、まず酒井 菜摘氏。立憲民主党が公認する見込みです。 そして日本共産党は番組収録後の4月8日、小堤東氏が出馬を取り下げ、酒井氏に一本化することを正式に表明しました。 続いて、元衆院議員で自民党だった秋元司氏も立候補を表明。秋元氏は、柿沢未途氏の前にこの東京15区で衆院議員を務めていましたが、IR(統合型リゾート施設)の事業をめぐる汚職事件で、収賄と証人買収の罪に問われ、現在上告中です。 MC鈴木「現職でいうと、須藤元気さんも」 須藤氏は立憲民主党から参議院議員となりましたが、その後離党。今回は無所属で出馬表明しています。 日本維新の会からは金沢結衣氏。新人ですが、前回も東京15区で立候補されており、維新としては支持をまとめてくるのではないかと思われます。 続いて、参政党の吉川里奈氏。看護師のかたで、当初は東京1区公認が予定されていましたが、東京15区に「国替え」されました。 ネットで話題の日本保守党からは、大学教員の飯山陽さんが立候補を表明、地域で活動されています。 そして4月8日、乙武氏の出馬会見の前に会見されていたのが、つばさの党の根本良輔氏。今回の8人の中でもっとも若い29歳です。
支持率低下の結果、自民党票のベースは約5万票。保守系候補乱立でどうなる?
今回の補選東京15区での基盤ととなる票数を読み解いていきます。
まずは自民党。 最近の「政治とカネ」の問題で、地域にもよるが、自民党の得票が3分の2くらい、もしくはもう少し減っています。そもそも政党支持率が3分の2以下になっているので、 MC鈴木「仮に、直近の2回の国政選挙と同じくらいの投票率だったとしてもですよ。
おそらく自民党の得票が5万票いくかどうか」 立憲民主党は2021年衆院選から2022年参院選にかけて大きく票を減らしていますが、「それ以外の選挙でも支持基盤を見ると、4万票くらいはある」とのこと。直近は支持率が上がっているので、4万票をベースに考えてもいいかなと思います。
日本維新の会も4万票弱といったところ。 ここまでを整理すると、自民党がベースを減らして5万票。立憲民主党と日本維新の会がそれぞれ4万票弱といったところになるとMC陣は予想します。 過去の得票をベースに考えると、ファーストの会と自民党が推薦する可能性の高い乙武氏が、自民党の5万票を基礎として持ちます。
自主投票の公算が高い公明党は「半分も乗らないかもしれない。1万」、そして都民ファーストの会はどのくらいあるでしょうか……? MC伊藤由佳莉「前回の江東区長選では、自公都民ファーストが支持した現職の区長さんが5.7万、6万弱。これがひとつのラインになる気がしますが……」 MC鈴木は、都民ファーストの会で小池都知事が前面に出ることを想定。「(小池さんによって)どのくらい無党派層と自民党の支持から離れている人を取り戻せるかという戦いになる」と予想します。 MC鈴木「現状見えている票の基礎的な部分でいうと、やっぱり、5+1+ファーストの1、そこで小池さんがどのくらい後押しできるかという勝負になるだろうと思います」 過去の衆院選の小選挙区の結果を見ても、過去4回は自民党と柿沢未途氏が議席を争い合う構図。7万から10万票の間、だいたい7~8万票、得票率で3、4割取れば勝てる選挙区。
MC伊藤「柿沢さんの票がどこに行くのかも、すごく気になるところですが」 自民党では本部としては乙武氏を推薦する方向ですが、地元がなかなかまとまらないのが東京15区の傾向です。
取材を重ねるMC伊藤は、「東京15区は三国志と書いている新聞社もあります。地元と党本部との意識の差があると言われている。前回の選挙でも柿沢氏が自民党公認(編集部注:選挙時は推薦、当選時に追加公認)で出ているが、今村氏が自民党推薦で出ていた」と過去の経緯を説明します。
MC伊藤「地元からすると、柿沢さんがこのような形で議席を空かしたということなので、なかなか簡単には手打ちができないのではないかと」 しかも、元衆院議員の秋元氏は、柿沢氏の前に東京15区を地盤としていました。自民党の基盤票とされる5万票から秋元さんに流れる票が出ることもじゅうぶん予想されます。
MC鈴木「自民党でいうと、地元だから秋元さんを支持する方もいると思うので、例えば1万とか、1万5000とか持っていく可能性は十分ありますよと」 MC伊藤「前回も秋元さんが出馬する話がありましたが、ぎりぎりのところで幹部が止めに入ったという話がありまして。それだけ「公認」と「推薦」があったとはいえ、自民党を固めようとする動きがありましたが……今回はなかなかそういう動きも見られないということで、自民党支持票がどこに行くのか……」
さらに、直近の国政選挙に出ていなかった保守党などが新たに出ることで、保守系の票がかなり割れる可能性があるとMC陣は予想します。
MC鈴木「自民党の支持率がかなり下がっている中、保守系の選択肢がいくつかある状況だから、相当自民党票が割れると見ていいんじゃないかと。今の見立てだと、5万は乗らないかな」 そして、気になるのは浮動票の行方です。 小池都知事が推す候補に行くのか、野党勢力に向かうのか。 自公の態度が決定していないところがあるので読みにくい状況です。
収録時点の見立てだと、公明は乙武氏を推薦せず自主投票の公算が高いとされます。このため、MC陣では、公明党の票はすべて乗らないと計算しています。
立民+共産で6万強。酒井氏中心だが、須藤氏への流出は。そして維新金沢氏はどこまで健闘するか
野党系は、立憲民主党4万、共産2万ちょっとで、基盤として6万票強はありそうという見立てです。 MC陣は、「酒井さんのベースになるが、須藤氏(立憲民主の比例から無所属)が立憲や共産の支持層を食っていくのではないか」という見立てです。
MC鈴木「プラス、れいわ新選組がどうなるか。今は候補者も推薦もまだ決まっていませんが、1万票以上ありますから」 れいわの票が須藤氏に流れるのか、党独自の戦略を立てるのか、酒井氏に一定数乗るのかによっても、かなり違ってくる点に注目です。
加えて、参政党、つばさの党、そして保守党が、独自にどのくらい票を取るかも全体の選挙に与える影響も大きいと予想されます。 保守党は選挙初陣です。「ネット上での盛り上がりがすごいので、得票にどの程度つながるか注目したい」とMC陣は語ります。
そして、日本維新の会。与党でも野党でもない同党は、独自で支持基盤を固めるのではないかと予想します。 日本維新の会の金沢氏は前回が4万5000弱。もう少しで比例復活できるほど、健闘を見せています。 しかし、MC鈴木は、乙武氏が前回参院選で維新の支持層から得票していたことに触れ、「今回乙武氏が出馬したことで、本来4万弱ある支持基盤がどの程度流れるか。一方もともとの自民党支持層が選挙によって維新に流れる部分もある。
乙武さんが食う票もあれば、金沢さんが食う票があって、クロスするのではないか」と、厳しい表情を見せます。
MC鈴木「基礎票的な意味でいうと、乙武さんと酒井さん、金沢さんをベースに戦いが展開していく。その中にどれだけほかの候補が票を伸ばせるかという勝負になると思います」
MC伊藤「江東区は三国志といわれますが、まさに春秋戦国時代じゃないかというほど、多くの勢力が参戦してきているので」 さらに、見逃せないのが投票率です。
今回の投票率は「過去の衆院選、参院選ほどは上がらない」とMC陣は予想します。その場合、基本的に無党派層の票が出てきません。それがどう影響するかが気になります。 MC鈴木「あとは小池さんの影響で、どこまで自民党の支持層が固まり、かつ与党派の支持層が乗るか。あと公明党ですね。公明党支持層がどこまで乙武氏に乗るかで勝敗ラインが決まってきそうな感じがしますね」