「国スポ」大会 時代の変化に応じた見直しを(2024年5月6日『読売新聞』-「社説」)

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 都道府県の持ち回りで毎年開催されている国民スポーツ大会(国スポ)のあり方を巡る議論が活発になっている。時代の変化を踏まえ、大会の意義や実施方法を見直したい。
 国スポは1946年、国民体育大会(国体)として始まり、今年から名称が変更された。近年は、閉幕後に全国障害者スポーツ大会も開かれる。2034年の沖縄大会で全国の2巡目が完了する。
 この大会について、全国知事会長を務める宮城県村井嘉浩知事が「廃止も一つの考え方だ」と問題提起した。他の知事からも見直しを求める声が相次いでいる。
 知事たちには、現在の形のまま3巡目に入るのではなく、一度立ち止まって、大会について抜本的に見直すべきだという問題意識があるのだろう。
 大会はこれまで、国や地域のスポーツ振興に一定の役割を果たしてきた。開催を機に、全国で競技施設や道路の整備が進んだ。知名度の低い競技を含むスポーツの普及や選手・指導者の育成、競技力の向上にも貢献してきた。
 一方で、多くの知事が示しているのは、開催に伴う都道府県の費用負担が重いという認識だ。
 大会は開催地と国、日本スポーツ協会の共催だが、経費の大半は開催地が負担してきた。
 今年の開催地の佐賀県は、大会運営や施設整備に計157億円を充てるという。地方を中心に人口が減少し、財政も 逼迫ひっぱく している。将来的には、単独開催が難しくなる県も出てくる懸念がある。
 このためスポーツ協会は、知事会も交えた新たな検討の場を設けて今後の方向性を示す方針だ。知事会も意見集約を進めている。
 持続可能な大会とするには、3者の負担割合を見直すことが不可欠だ。開会式の簡素化や既存施設の活用、隔年開催や複数県による広域開催などで負担軽減を図ることも一案だろう。
 競技面でも総合優勝を目指す開催県の有力選手集めが問題視されてきた。都市部への人口集中が進む中、現在の都道府県対抗形式に代わる競技方法も検討課題だ。
 国際大会を優先して国スポには出場しないトップ選手も少なくない。「国内最大・最高の総合スポーツ大会」という国スポの理念が妥当なのかどうかについても議論を避けるべきではない。
 多くのアスリートにとって、大会への出場は今も大きな目標である。現状を踏まえた大会のあり方やスポーツの役割を、幅広く議論することが大切だ。