野崎幸助さん(右)と元妻の須藤早貴被告=平成29年12月(ジャーナリストの吉田隆氏撮影)
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=に対する殺人罪などで起訴された元妻の須藤早貴被告(28)について、事件前に別の男性=当時(61)=から現金をだまし取ったとする詐欺罪の第2回公判が17日、和歌山地裁で開かれ、被害男性の証人尋問が行われた。男性は「美容師になる夢を応援してあげたかった」と金を振り込んだ理由を説明。被告との出会いから、計約2980万円もの大金を支払うようになった経緯を明かした。
「純粋な女性」
「美容師になりたい。学費のためにキャバクラで働いている。親は学費を出してくれない」。被告は〝身の上〟を男性にこう説明した。
証言によると、平成26年秋、客として訪れた札幌市内のキャバクラで出会った。「清楚(せいそ)で純粋な女性」との認識だった。メールアドレスを交換し、カラオケに行くこともあった。
被告の話を聞いた男性は「美容師になる夢を応援してあげたい」との思いを強めた。「学費を出してやる。キャバクラを辞めなさい」と伝え、学費や生活費などとして金を振り込むようになった。
被告は男性と出会った数カ月後にキャバクラを辞めてからも、海外留学の準備金やモデルの髪を傷めた慰謝料などの名目で金を要求した。
殺し文句のように「(男性以外に)助けてくれる人がいない」とせがみ、支払いを承諾すると「うれしい。ありがとう」と明るい表情を見せた。男性は投資信託を解約するなどして金を捻出したという。
「性的関心ない」
10日の初公判で、被告は「噓をつきましたが、(被害男性は)それを分かったうえで、私の体をもてあそぶためにお金を払った」と述べ、詐欺罪の成立を争う姿勢を示していた。
この点について、男性は「噓だと分かっていたら金を払わなかった」と強調。「(被告に対し)性的な行為を要求したことはない」と被告の主張に反論した。
被告は、30年5月24日に殺意を持って致死量の覚醒剤を野崎さんに摂取させて殺害したとする殺人罪などでも起訴されている。被告と野崎さんは同年2月に結婚したばかりだった。この殺人事件の裁判が始まる見通しは立っていない。
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17日の証人尋問の主なやりとりは以下の通り。
検察官「被告は、男性が被告の体をもてあそぶために金を払ったと主張している」
男性「違います」
検察官「噓と分かっていたとも主張している」
男性「(そうした事実は)ありません」
検察官「被告が噓をついていたと知ったときは」
男性「絶句。声も出なかった」
検察官「被告に対する処罰の感情は」
男性「厳しい処罰、刑務所に入ることを望む」
弁護人「家族でもないのにどうして学費を支払った」
男性「美容師になりたいという早貴の夢を応援したかった」
弁護人「被告に対する印象は」
男性「純情で、すてきな子に見えた」
弁護人「性的な関心を抱いたことは」
男性「それはない」
弁護士「(起訴内容の)金は『あげた』という認識か」
男性「そうした認識はない。立派になったら返してもらえるかなという期待があった」