原子力発電で出るいわゆる「核のごみ」の処分地選定に向けて、経済産業省は1日、佐賀県玄海町に対し、第1段階にあたる「文献調査」の実施を申し入れました。
高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」は、長期間強い放射線を出し続けることから、地下300メートルより深くに埋めて最終処分することが法律で決まっていて、処分地の選定に向けた調査は3段階で行われます。
佐賀県の玄海町では、先月、町内の3つの団体から第1段階の「文献調査」受け入れを求める請願が町議会に提出され、審議の結果、賛成多数で採択されました。
こうした状況を踏まえ、1日午後、経済産業省の松山泰浩首席最終処分政策統括調整官が玄海町役場を訪れて脇山伸太郎町長と面会し、「文献調査」の実施を申し入れる齋藤経済産業大臣からの文書を手渡しました。
調査は、自治体が公募に応じるか国の申し入れを受け入れることで実施が決まることになっていて、国が申し入れを行うのは、4年前に調査を受け入れた北海道神恵内村に続き2例目です。
処分地選定へ“国の申し入れ”の手法 2015年に導入
いわゆる「核のごみ」の処分地の選定に向けた調査を国から申し入れる手法は2015年に導入されました。
▽2000年に、最終処分法が制定されて以降、国は、全国の自治体に応募を呼びかけてきましたが、応募を検討する動きが表面化するたびに、住民や周辺自治体などから反発をまねき、断念するケースが相次ぎました。
▽2007年には、高知県の東洋町が全国で初めて応募しましたが、賛成派と反対派の対立の末、町長選挙で現職が落選し応募が撤回された例もあり、経済産業省の審議会などでは、「調査の応募を判断する自治体の首長への負担が大きすぎる」といった指摘が出ていました。
加えて、
▽2011年に、東京電力福島第一原発の事故が起きたあとは、調査について表立って議論される機会はほとんどなくなりました。
このため、
▽2015年に基本方針が改定され、「国が前面に立って取り組む」として、自治体からの応募を待つだけでなく、国から調査の実施を申し入れる手法が導入されました。
実際に国が申し入れを行ったのは、
▽2020年の北海道神恵内村と
▽今回の佐賀県玄海町の
2例で、いずれも議会で調査受け入れを求める請願が採択されたあと、町村長の判断を後押しする形で行われています。
玄海町役場では連日抗議活動も
玄海町長「申し入れ大事に」
経産省「地域の理解なしには進められないもの」
玄海町への文献調査を申し入れのあと、経済産業省の松山泰浩首席最終処分政策統括調整官は「調査の取り組みは地域の理解なしには進められないものだ。玄海町では、地域で議論が進んでいて、議会で請願が採択されたことなども踏まえ、できるかぎり多くの地域で調査を実施したいという国の思いに理解と協力を求めるべきだと判断した」と述べました。
そのうえで、原発の立地自治体である玄海町で「文献調査」の受け入れが議論されていることについては、「立地地域でこうした議論が行われたことは、敬意と感謝を申し上げたいが、最終処分の問題は特定の地域ではなく、国全体で考えていくべき課題だ。より多くの地域で関心を持ってもらえるよう引き続き全力で取り組む」と話しました。
また、申し入れのあと非公開で行った会談で、脇山町長に対し、齋藤経済産業大臣と面会して直接考えを伝えることを持ちかけたということで、脇山町長も応じる考えを示したことから、今後、面会の日程を調整する考えを示しました。