「消滅」自治体 次世代育てる施策を強化せよ(2024年4月28日『読売新聞』-「社説」)

 人口減少に歯止めをかけるのは容易ではない。だが、手をこまねいていれば、日本全体が衰退してしまう。行政も民間も少子化対策に総力を挙げる必要がある。
 民間有識者でつくる「人口戦略会議」は、全市区町村の4割にあたる744自治体がいずれ、人口減によって行政の運営が困難になり、「消滅する可能性がある」とする報告書を公表した。
 「消滅可能性」の根拠として、出産の中心世代とされる20~39歳の女性人口が今後、50%以上減ることを挙げている。
 日本の総人口は近年、60万人前後のペースで減っていて、2100年には6277万人に半減するとされる。現在29%の高齢化率は40%に達する。経済は縮小し、介護や防災など行政機能の維持も難しくなるだろう。
 結婚や出産は、個人の意思が尊重されるべきだ。ただ、経済的事情などで結婚や出産の希望が 叶かな わないのであれば、支障を取り除かなければならない。
 若い世代の結婚を後押しするには、まずは賃上げが欠かせない。また、仕事と育児を両立できるよう長時間労働の是正も必要だ。
 こうした報告書は10年前にも示された。今回は「消滅可能性自治体」の数が前回調査から152減った。だがその理由は、労働目的の外国人が増えるためで、日本人人口の安定にはつながらない。
 10年前の報告をもとに、当時の安倍内閣は「地方創生」に取り組んだが、多くの自治体が、若い住民を奪い合うかのような施策に走ったため、肝心の少子化対策が不十分だったとの指摘もある。
 読売新聞は、こうした状況を踏まえ、若者と家庭の支援など7項目を提言した。デジタル化や街づくりなど幅広い対策が不可欠だ。政府は、省庁横断の対策本部を設け、一体的に施策を推進できる体制を築くべきだ。
 地域によっては、子育て支援策の拡充などで、少子化を改善させた都市もある。
 茨城県つくばみらい市、千葉県流山市は、若い夫婦のための住宅を確保し、駅近くに保育所を整備するといった街づくりを進めた。会議は、こうした65自治体を持続可能性が高いと評価した。
 成功事例を共有し、各地に広げていきたい。
 地方自治のあり方についても、改めて見直すべき時期にある。水道や消防などの事業を広域で担うことや、市町村のさらなる合併も検討課題となるだろう。