政治資金問題 規正法改正の議論を建設的に(2024年4月28日『読売新聞』-「社説」)

 政治資金の扱いを透明化し、国民の信頼を取り戻すという目的では与野党に違いはないはずだ。各党は政局的な駆け引きを排し、国会で建設的に論じ合う必要がある。
 政治資金規正法違反事件を受けて新設された衆院政治改革特別委員会が初めて開かれた。与野党がそれぞれの改革案を説明した。6月23日の会期末までに、規正法を改正できるかどうかが焦点だ。
 自民党は当初、独自案はまとめないとしていたが、岸田首相の指示を踏まえ、案を作成した。
 自民党案では、会計責任者が作る収支報告書について、議員本人が内容を適正だと確認し、それを「確認書」として添付することを義務付けた。議員の監督責任を明確にするためだ。
 会計責任者の扱いに不正があって立件された場合、確認書があっても、議員の確認作業が不十分であれば、議員も公民権停止となり失職する、とした。
 「秘書に任せていた」という言い訳を封じ、政治家の責任を追及しやすくする狙いのようだが、会計処理が適正かどうかは誰が判断するのか。市民団体からの告発を受け、判断は検察当局に任せるというのが健全と言えるのか。
 一方、自民党は、政治資金パーティー券の購入者の公開基準や、政党が議員に支給している政策活動費の見直しについては、「検討項目」にとどめた。
 現在、パーティー券の購入者の公開基準は1回あたり20万円超だ。この規定を、個人などの寄付と同じ年5万円超とする見直しは最低限必要ではないか。
 自民党の、企業や個人の政治献金を原資とした政策活動費は、年10億円に上っている。巨額の資金をどのように使っているのか、一切の説明がないままの現状では国民の理解は得られまい。
 一方、立憲民主党は、政治資金パーティーや、企業・団体献金の禁止を主張している。また、個人からの寄付について、税金の控除を拡大するとした。個人が寄付をしやすくする狙いという。
 欧米に比べ、日本は個人の寄付が根付いていない。実際、立民の収入も、個人の寄付は少なく、現在はほとんどが国民の税金の政党交付金頼みとなっている。
 個人の寄付の拡大が期待しにくい中で、パーティーなどを禁止した場合、政治活動に必要な資金をどう賄うつもりなのか。毎年計300億円に上る政党交付金を、さらに増やすことを前提にしているとでも言うのだろうか。