自民の規正法見直し案 改革の名に値せぬ弥縫策(2024年4月25日『毎日新聞』-「社説」)

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自民党の政治刷新本部政治資金に関する法整備検討ワーキンググループで発言する鈴木馨祐座長(中央)。右は渡海紀三朗政調会長=同党本部で2024年4月23日午後4時3分、平田明浩撮影
 
 政治改革と呼ぶに値しない弥縫(びほう)策だ。これで失われた国民の信頼を取り戻せると考えているのか。
 自民党派閥の裏金事件を受け、自民がようやく政治資金規正法改正の独自案を公表した。野党各党と公明党は年初に改革案を提示済みで、遅きに失した。
 当初は案をまとめないまま与党協議に臨んだが、野党だけでなく公明からも突き上げられ、示さざるを得なくなったのが実情だ。
 しかも内容は踏み込み不足だ。
 議員本人の責任強化では、政治資金収支報告書が適正に作成されたことの「確認書」の提出を義務づける。不記載などで会計責任者が処罰され、議員が確認を怠った場合には公民権が停止される。
 自民は「いわゆる連座制」と説明しているが、公職選挙法連座制ほど厳格ではない。「確認」の具体的な方法が示されず、言い逃れの余地が残った。
 不記載額を国庫に納付させる規定も新設するが、それで議員が免責されるわけではない。
 野党各党が求める企業・団体献金の廃止や制限については、具体策に一切触れなかった。
 事件の温床となった政治資金パーティー券の購入は、事実上の企業・団体献金となっている。公明が購入者名の公表基準額引き下げ、野党が購入の禁止などを主張する中、自民案は「各党との真摯(しんし)な協議を行う」と記すだけだ。
 そもそも、政治資金の透明化に全く踏み込んでいない。政党から政治家個人に支出され、使途の公開義務がない政策活動費の見直しも後ろ向きだ。「透明性のあり方」が課題としながら、企業などの政治活動の自由を口実に、「公開になじまない場合」もあると記した。
 自民の茂木敏充幹事長の政治団体が公開基準の緩い「その他の政治団体」に多額の資金を移していたことも問題となった。だが、こうした脱法的な行為への歯止めも講じていない。
 事件の実態解明に正面から取り組まない上に、改革から背を向け続ける自民の姿勢が、国民の政治不信を深めている。
 規正法の目的は、政治活動を「国民の不断の監視と批判の下」に置くことだ。自民は各党と協力し、その趣旨にかなった抜本改正を今国会で実現しなければならない。