政治改革と呼ぶに値しない弥縫(びほう)策だ。これで失われた国民の信頼を取り戻せると考えているのか。
当初は案をまとめないまま与党協議に臨んだが、野党だけでなく公明からも突き上げられ、示さざるを得なくなったのが実情だ。
しかも内容は踏み込み不足だ。
不記載額を国庫に納付させる規定も新設するが、それで議員が免責されるわけではない。
野党各党が求める企業・団体献金の廃止や制限については、具体策に一切触れなかった。
事件の温床となった政治資金パーティー券の購入は、事実上の企業・団体献金となっている。公明が購入者名の公表基準額引き下げ、野党が購入の禁止などを主張する中、自民案は「各党との真摯(しんし)な協議を行う」と記すだけだ。
そもそも、政治資金の透明化に全く踏み込んでいない。政党から政治家個人に支出され、使途の公開義務がない政策活動費の見直しも後ろ向きだ。「透明性のあり方」が課題としながら、企業などの政治活動の自由を口実に、「公開になじまない場合」もあると記した。
事件の実態解明に正面から取り組まない上に、改革から背を向け続ける自民の姿勢が、国民の政治不信を深めている。
規正法の目的は、政治活動を「国民の不断の監視と批判の下」に置くことだ。自民は各党と協力し、その趣旨にかなった抜本改正を今国会で実現しなければならない。