1707年に噴火した富士山の宝永火口。富士山は、その後は噴火していない=2019年9月14日、永山悦子撮影
日本は、世界有数の火山国である。研究・観測の体制を充実させ、防災に生かすことが重要だ。
調査や観測の計画策定、研究予算の配分などを一元的に担う司令塔だ。長期的な噴火のリスクも評価する。
世界の活火山は約1500を数え、日本には1割近い111が集まる。
しかし、これまでは気象庁、大学、研究機関などが、それぞれの予算を使って個別に研究・観測を実施してきた。
そもそも、火山研究を巡る課題は多い。
噴火の様態は、火山によってさまざまだ。多様な活動を正確に把握し、見通しを分析するには、きめ細かなデータの取得が必要だ。
にもかかわらず、観測網は十分とはいえない。
気象庁が常時監視の対象とする活火山は50で、全体の半数に満たない。十分な予算が確保されず、大学などの施設や体制の維持が厳しい状況にある。
専門家の少なさも深刻だ。大学の火山学者などは「40人学級」と揶揄(やゆ)されるほどの人材難だった。御嶽山噴火後の育成プロジェクトなどで増えたとはいえ、今も100人程度にとどまる。
専門人材の育成を急がねばならない。若手が能力を発揮できるポストの確保も必要である。
火山は、温泉や美しい景観など恵みももたらしてくれる。新たな組織の発足を、火山と共生しながら防災力を高める契機にしたい。