大地震想定、九州・山口で進む見直し 「地震少ない」認識改め(2024年3月19日『毎日新聞』)

福岡市の市民総合防災訓練で、テントやエアベッドを組み立てる参加者ら=福岡市中央区で2024年3月2日、竹林静撮影
福岡市の市民総合防災訓練で、テントやエアベッドを組み立てる参加者ら=福岡市中央区で2024年3月2日、竹林静撮影

 元日に発生し大きな被害を出した能登半島地震は、いつ襲われるか分からない大規模地震への備えの重要性を改めて示した。20日は福岡市などで震度6弱を観測し1人が死亡した2005年の福岡沖玄界地震から19年。かつて「地震が少ない」とされてきた九州・山口だが、16年4月には熊本地震も経験し、リスクと無縁でないことが共通認識となりつつある。各県で被害想定の見直しも進む。

 マグニチュード(M)7・2の地震が発生し、震度6強を観測した――。今月2日に福岡市中央区の複合施設「りすのこスクエア」であった、地元自治会や市などが主催した防災訓練。福岡沖玄界地震では福岡市の市街地から博多湾にかけて延びる警固断層帯の海域部分が震源となったが、陸地側が震源となった場合の被害を想定し、住民ら約200人が参加し、避難時の手順を確認した。

 福岡県は市街地で警固断層地震を引き起こした際の被害を、死者1100人超、負傷者2万2000人超、避難者4万人超と想定する。訓練では、プライバシーを守れるテントやベッドを組み立てたり、敷地内のマンホールを使った仮設トイレを設置したりした。市中央区役所の小峯浩明防災・安全安心係長は「訓練の継続が防災意識の向上につながる。平時からの備えが大切だ」と力を込めた。

主要活断層以外にもリスク

 政府の地震調査研究推進本部地震本部)は、直下型地震の原因となりうる全国の陸域に約2000あるとされる活断層のうち、主要活断層114を公表し、地震規模や発生確率などの長期評価を行っている。

九州・山口のSランク活断層九州・山口のSランク活断層

 主要活断層で30年以内の地震発生確率が3%以上の「Sランク」は、九州・山口やその周辺で警固断層帯以外に、菊川断層帯山口県、M7・6程度)▽雲仙断層群(長崎県、M7・3程度)▽日奈久断層帯熊本県、M7・3~7・5程度)――など複数ある。

 ただ、主要活断層以外にも、リスクがある活断層は存在する。地震本部が近年新たに調査を進めているのが、海域にある活断層だ。大規模な地震が発生すれば、津波の被害も想定される。能登半島地震も複数の海域活断層が連動して引き起こしたと指摘される。

「最悪の最悪を考えて」

 能登半島地震の発生や、新たな知見などを受け、各地の自治体では被害想定の見直しの動きが広がる。

 福岡県は24年度に有識者でつくる「専門委員会」を設置し、福智山断層帯など地震本部が17年に新たに主要活断層に選んだ県内3断層を対象に、人的被害や建物損壊の規模を調べる。海域活断層についても、調査が必要か検討する方針だ。

 長崎県は海域活断層の長期評価を受け、24年度に県内の最大震度や津波の浸水範囲などを調査する。25年度以降は県に大きな影響を与える海域活断層を絞り込んだうえで建物や人的被害を算出し、防災計画を見直す。県の担当者は「多くの離島を抱えており、日本海側で地震が起きた時の影響は大きい。できる限り早く計画を見直したい」と話す。

 山口県能登半島地震を受け、地震津波の被害想定を見直す検討会を4月に設置することを決定。佐賀県は、内閣府が近く公表するとされる南海トラフ地震の被害想定の調査結果を見て、見直しに着手する。

 神戸大の室崎益輝・名誉教授(防災計画学)は「全国どこでも直下でM7を超える地震が起きる可能性がある。最悪の最悪を考えて被害想定を見直し、そのリスクを住民と共有することが大切だ」と指摘する。【城島勇人】