元NHKアナウンサーでユニークな司会で知られた…(2024年4月21日『毎日新聞』-「余録」)

キャプチャ
NHKアナウンサー当時の鈴木健二さん。番組に合わせてメガネを替え、変身を図った
 
キャプチャ2
東京圏の旧7帝大合格者数
 
 元NHKアナウンサーでユニークな司会で知られた鈴木健二さん(95歳で先月死去)は、東京出身ながら旧制弘前高校を経て東北大学に進学した。尊敬していた哲学者、阿部次郎の集中講義が仙台市の同大で行われると聞いたためだ。阿部の病気のため講義は実施されなかったが「一目会いたい」と居宅を訪ね、激励されたと著作にある(「何のため、人は生きるか」)
▲故郷を離れて大学に進学する若者は今も多い。だが、その様子に変化がみられるという。小紙の分析によると東京圏にある高校の出身者で、難関とされる国立の旧帝国大学に合格した人はこの15年間で1・68倍に増えた
▲東京圏とは、東京都と神奈川、埼玉、千葉の3県を指す。旧帝大でも北海道大、東北大など地方にある大学への「東京勢」の進出が目立っている
▲地方志向が東京などの高校生に強まっているわけではないらしい。東京圏は中学受験や、中高一貫教育が盛んだ。入試対策の先行が、他地域への進出につながっているとみられる
▲対照的に、地方の高校生が在京の大学に進学するハードルは高い。家賃などの物価上昇にもかかわらず、親からの仕送りは減少傾向にあるとの調査結果もある。地元の有力大学にも東京勢が進出してきて、守勢に回る状況が浮かぶ
▲鈴木さんが地方で過ごした学生時代は、個性あふれる活躍の素地となったことだろう。受験を巡る地域の「格差」ゆえに、東京勢が増えていくキャンパスに多様さはあるのか。その行方が少し気になる。