グーグル行政処分 巨大ITの独占どう防ぐ(2024年4月19日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 インターネット検索サービス大手の米グーグルが、公正取引委員会行政処分を受けることになった。

 競合するLINEヤフーに対し、ネット広告事業の一部を取りやめるよう不当に要求。ヤフーはグーグルの要求を受け入れていた。

 ヤフーはグーグルから重要なネット技術の提供を受けており、従わざるを得なかったようだ。

 技術力のある大手が他社に圧力をかける行為を放置すれば、市場は独占に向かう。特定の企業が価格決定権を握ることになり、その悪影響は消費者にも及ぶ。

 公取委の指摘を受け、グーグルは改善計画を提出。ヤフーへの要求も撤回したという。計画の認定をもって行政処分となる。競争環境が確保されるよう、公取委は引き続き監視を強めてほしい。

 問題となったのは、スマートフォンやパソコンで検索した内容に合わせた広告が自動的に表示される「検索連動型広告」だ。

 例えば、「筋トレ」と検索したスマホにはジムやプロテインの広告が多く流れるようになる。宣伝効果の大きさから市場規模が拡大。2023年には国内のネット広告費全体の約4割に当たる1兆729億円に上った。

 ヤフーは10年から、グーグルの技術提供を受け、自社以外のポータルサイトにも検索連動型広告の配信を始めた。グーグルがやめるよう要求したのは、この自社以外のサイトへの配信だった。

 独占の進行は当初から懸念されていた。グーグルは、ヤフーに自由な広告運営を認めて競争関係を維持すると説明。公取委も受け入れた経緯があった。約束がほごにされた形だ。

 問題の根底には、必須のインフラになった検索サービスでのグーグルの圧倒的なシェアがある。世界で約9割を占める。

 一部の巨大企業によってサービスの土台が握られ、市場に参入した他社が不平等な競争を強いられる。この構図はIT業界全体の課題と言える。人気のスマホ「iPhone」を手がける米アップルについても問題化した。

 巨大企業による独占・寡占の弊害をどう防いでいくか。欧米各国は対策に力を入れ始めている。欧州委員会は今年3月、巨大ITに自社サービスの優遇を禁じる「デジタル市場法」をグーグルなどに適用した。

 日本でも現在、公取委が新たな巨大IT規制法案の提出を目指している。公正な市場づくりへ、知恵を絞っていく必要がある。