神戸市須磨区のユニバー記念競技場で5月17~25日に行われる世界パラ陸上競技選手権大会の開幕まで、1カ月を切った。神戸大会は11回目で、東アジアでは初めての開催となる。国内はもちろん、世界の約100カ国・地域から約1300人のパラアスリートが集い、世界最高峰の競技を繰り広げる。
神戸市が中心になって運営する国際大会は、1989年のフェスピック神戸大会(極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会、現アジアパラ大会)以来35年ぶりだ。神戸ではフェスピックを機に、障害者の水泳クラブをつくったり、女子車いすバスケットボールの全国大会を開いたりと取り組みが続いてきた。
今回の世界パラ陸上も、共生社会の実現に向けた大会として成功するよう、運営に万全を期したい。
神戸大会は「つなげる」「ひろげる」「すすめる」という基本理念を定めた。東京パラリンピックの成果を継承してパラスポーツへの関心を高める。スポーツを通じた国際的な交流の輪を広げる。インクルーシブな(分け隔てのない、包摂的な)社会の実現へ、誰もが暮らしやすいまちづくりを進める-との内容だ。組織委員会には、選手や市民に浸透するような工夫が求められる。
2020年の東京パラリンピックは新型コロナウイルスの感染拡大で21年に延期され、原則無観客で開催された。神戸大会では組織委が1日1万人の観客数を目標にする。東京では十分にできなかった選手同士、そして選手と市民との交流が、神戸では実現することだろう。
ただ、コロナ禍は神戸大会にも影響を残した。当初の21年開催の予定が22年、さらに今年に延期された。パラリンピックの翌年に行うはずが、3年後となった。
懸念されるのは、パラスポーツへの市民の関心度だ。昨年4月、テスト大会としてユニバー記念競技場であった日本パラ陸上競技選手権大会は、アジア記録が出るほどのレベルだったにもかかわらず、2日間とも千数百人の観客数にとどまった。
今大会に向けては、キャラバンカーが全国を回ったほか、大学生らがPRプロジェクトを行った。こうした取り組みが実を結ぶことを期待したい。開幕直前の周知も重要だ。
障害者差別解消法の改正で、4月から、障害のある人への「合理的配慮」の提供が民間事業者にも義務付けられた。合理的配慮は、06年に国連総会で採択された障害者権利条約にも記されている。だが、まだ広く理解されているとは言い難い。