身寄りのない高齢者の生活支援 自治体の負担明らかに 実態調査(2024年4月19日『NHKニュース』)

寄りのない高齢者の生活支援については、家族に代わって自治体や社会福祉協議会、それに民間の事業者も担っていますが、それぞれどの程度の負担があるのか国が実態を調査したところ、公的な手続き以外にもニーズが多岐にわたることから自治体などのほうがより負担を感じていることが明らかになりました。

身寄りのない高齢者の増加に伴い、これまで家族が担ってきた身の回りの世話などの支援をケアマネージャーなどが業務外で行っている実態が問題となっている一方で、契約を結んで支援を行う民間の事業者も増えています。

こうしたなか、国は日本総合研究所に補助を行い全国の自治体や社会福祉協議会、それに高齢者の身元保証などを行う民間の事業者などを対象に、支援を行う際にどの程度の負担があるのか初めて実態を調査しました。

調査では生前から亡くなったあとまでの30項目について『権限が明確でないため対応が難しい』と回答した割合を比較していて、自治体や社会福祉協議会は「入院の手続き」や「サービス付き高齢者住宅への入居契約」「葬儀」など24項目で事業者を上回りました。

調査からは介護保険や亡くなったあとの書類作成などの公的な手続き以外の多岐にわたるニーズについて、自治体や社会福祉協議会が利用者と契約関係にある民間の事業者に比べてより負担を感じている傾向が浮かび上がりました。

日本総合研究所は「これまでは家族が担ってきた支援も含め外部でどう担っていくのかあらためて議論する必要がある」と提言しています。

調査の結果を踏まえ、国は身元保証を行う事業者のガイドラインを作成するなど、対策を進めることにしています。

通院や納骨も 広がる事業者支援 

1人暮らしの高齢者が増え身寄りがない人への支援が課題となる中、身元保証事業者や住まいのサポートなどにあたる「居住支援法人」の利用が広がっています。身元保証事業者を利用している殿岡さえ子さん(71)はおととし夫を亡くし、都内で一人暮らしをしています。

交通事故の影響で高次脳機能障害があるほか、腰椎に痛みもあり、月に数回のクリニックへの通院時には、事業者の付き添いサービスを利用しています。

事業者のスタッフは診察まで立ち会い、医師の問診を一緒に聞いたり、骨折予防の注射を打つのを見守ったりしたほか、受診料の支払いや薬局で薬の処方を受けるのをサポートしていました。

殿岡さんは「今は特に体の具合が悪いので重い荷物を持ってくれたり、いっしょにあちこち連れて行ってくれたりするのはとても楽で助かります」と話していました。

この事業者は利用者の容体が急変したときに備え、受けたい医療や最期に過ごしたい場所などの要望を定期的に確認しているほか、亡くなった後に備え、葬儀や納骨などを行うことをあらかじめ定める契約も結んでいます。

殿岡さんは夫の骨を納めた都内の寺の納骨堂にいずれは自身やペットの犬の骨も納めてもらうか悩んでいるということで「もしかしたら私もこの納骨堂に入りたいと思うかもしれないので、そのとき助けてもらえるとうれしいです」と話していました。

身元保証事者の小池安喜さんは「利用者が元気なうちからいざというときの希望や思いを聞いておくことではじめて本人の意思を代弁することができます。高齢で身寄りがなければ、生活に不備が生じる場面が現実にはあり、支援を通じて安心につなげられればと思います」と話していました。

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