【震災13年 高齢化への対応】実情見据えた支援を(2024年3月13日『福島民報』-「論説」)

 県社会福祉協議会が県内全ての復興公営住宅(災害公営住宅)の入居者に対して実施した調査で、入居者の高齢者の割合が高く、福祉・医療支援の一層の充実が求められる実態が浮き彫りになった。入居者が心身ともに健康な生活を送るには、実情を見据えた体制づくりが急務と言える。

 県社協が避難元、避難先の市町村に配した生活支援相談員らが昨年、15市町村の4767戸を調べ、結果を先月末に公表した。避難者が入居する3512戸のうち、60代以上の1人暮らしまたは65歳以上の高齢者のみは1849世帯で、入居戸数全体の52・6%に上った。特別な環境下にあるため単純比較はできないが、県内の高齢化率33・5%を19・1ポイント上回っている現状は多くの課題を投げかける。

 単身は2043世帯、42・9%を占め、2020(令和2)年の国勢調査に基づく県内単身世帯の33・1%の約1・3倍となった。60代以上は72・1%に及ぶ。70代が29・2%で最も多く、60代が20・3%、80代が17・7%と続く。県中・県南を除く県北、会津、相双、いわきの4地区は70代以上が半数を超えた。

 生活に関する調査に回答した3894世帯のうち、31・4%に当たる1224世帯は「福祉・医療サービスを利用せずには日常生活を送れない」と答えた。年を重ねるごとに身体機能は衰え、介護・福祉の需要は高まる。各市町村社協は、今回の結果を介護予防につながる生きがいづくりや社協同士が連携しての対応強化に生かしてほしい。一方で、近所付き合いを望まず、訪問を拒む人もいるという。孤立を深めないよう、一人一人の事情や気持ちに配慮した見守りも欠かせない。

 将来的には、入居者と介護支援の団体をつなぐ取り組みが求められるだろう。調査の実行委員を務めた専門家は、入院や施設への入所、緊急時の身元保証、日常の金銭を含めた財産管理の体制を整える必要があると指摘する。

 現住居に住み続けるとしたのは44・9%、不明は48・8%だった。震災と原発事故発生から14年目に入った。古里に戻るか、避難先にとどまるかの間で心が揺れ動いている避難者もいるだろう。充実した生活を送れるよう地域全体で寄り添う環境も築いていかねばならない。(湯田輝彦)