住まいの貧困(2024年4月16日『しんぶん赤旗-「主張」)

放置できぬ高齢者の入居困難
 高齢者、外国人、障害者、シングルマザーなどへの入居拒否が、いま大きな社会問題になっています。

■1人暮らしが増加
 国交省の2021年度調査では、家主が「入居に拒否感がある」とする借り手の割合は高齢者世帯で66%、障害者のいる世帯で66%、子育て世帯で18%です。日本賃貸住宅管理協会の調査(15年)では、民間賃貸住宅の貸し手の8割が高齢者の入居を拒否または拒否感を持っています。

 一方、国立社会保障・人口問題研究所が12日に公表した推計では、2050年に単身世帯が全世帯の44%にのぼるとされました。うち65歳以上の単身高齢者が約半数の1084万世帯となります。

 単身高齢者が賃貸住宅に入居するのはとりわけ困難で、放置できません。

 こうした中で国は今国会に住宅セーフティーネット法改定案を出し、生活困窮者自立支援法改定案に居住支援策を盛り込みました。

 住宅セーフティーネット法案は▽居住支援法人による居住者死亡後の残置物処理の仕組みづくり▽利用しやすい家賃保証業者の認定制度創設―などを講じるとします。生活困窮者自立支援法では▽見守り支援を自治体の努力義務にする▽家賃の安い住宅に転居する際の給付金の対象者拡大―などを掲げています。

 どちらも現場で求められている施策ではありますが、あまりに不十分です。

 最大の問題点は、高齢者などの住まい確保をもっぱら民間の居住支援法人などに任せるばかりで、国・地方公共団体の公的責任をあいまいにしていることです。

■減少続く公営住宅

 自民党政権は長く「住まいは自助努力で」と持ち家政策を進め公共住宅の整備を怠ってきました。国民の住まい確保に責任を持ってこなかったことが「住まいの貧困」を生んでいます。

 住宅困窮者が低額家賃で入れる公営住宅は減り続けています。管理する地方自治体が耐用年数を迎えた住宅を建て替えないためです。東京都では25年にわたって新規建設はゼロです。最近では宮城県が事実上、県営住宅をなくす方向性を明らかにしています。

 かつては公団で現在は独立行政法人のUR賃貸住宅は、23年3月で70万2千戸ですが、10年余りで5万3千戸減っています。しかも現在、家賃は市場任せで高く、値上げもされており、年金暮らしの入居者の多くが今後も家賃を払えるか不安を抱えています。

 さらに、60歳以上の一定所得以下の高齢者に国と地方自治体が2分の1ずつ家賃補助する「高齢者向け優良賃貸住宅」制度の打ち切りが、20年間の期間終了を理由に各地ですすめられています。困窮者に家賃補助する住宅セーフティーネット法で実際に補助が行われている住宅は22年度で452戸にすぎません。

 低所得者、高齢者などが安心して暮らせる住宅は圧倒的に不足しています。

 住生活基本法は、住宅は「国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤」とし、低所得者、被災者、高齢者、子育て世帯などの住まいの確保を掲げています。国はその立場に立ち、公共住宅の拡充を図り、国の責任による恒久的家賃補助制度を創設すべきです。