◆地下水位が高い地域で起こりやすい
「基礎部分のひび割れが広がっている家もあり、まだ液状化は進んでいる。余震も続き、家がいつ動くか分からず自宅に帰れない人も多い。道路も隆起した箇所を避けながら、車を運転しています」
路面が波打ち、砂が地中からあふれた県道=1月、石川県内灘町で
液状化は地震による強い揺れで、地盤をつくる砂などの粒子が地下水と混ざり合って結合がなくなり、どろどろの液体のように軟らかくなる現象。水よりも比重が重い建物が沈んで傾いたり、マンホールが浮き上がったりする。埋め立て地や干拓地、砂丘といった地下水位が高く、地盤が砂の地域で発生しやすい。
◆沈み込んだり、横にずれたり
内灘町の震度は5弱だったが、損壊家屋は約1600棟。その大半が液状化によるものと町はみている。配管が壊れて水を使えなくなったり、軟らかくなった地盤に建物が沈み込んだり。地盤が横方向に大きくずれる「側方流動」で動いた住宅も多く確認されているという。
液状化の被害はさらに広範囲に及んでいる。防災科学技術研究所の調査では3月22日までに石川、富山、福井、新潟県の少なくとも2013カ所で確認された。さらに増えていく見込みといい、過去40年の大地震では東日本大震災(8680カ所)に次ぐ規模だという。
東日本大震災は首都圏にも液状化をもたらした。埋め立て地が多い千葉県浦安市は道路のあちこちでマンホールが浮き上がり、水道管も破断。同市は1カ月後の統一地方選で、復旧のために県議選の投開票を見送り再選挙となった。
液状化は、首都直下地震でも想定されている。東京都が2022年5月に公表した被害想定のシナリオは、発災直後~1日後に「液状化地域では、住宅の傾斜など、継続的な居住や日常生活が困難化」としている。上下水道やガス、鉄道、道路などのインフラに影響が出ることが見込まれる。
都は液状化の可能性が高い地域として、低地で浅い層に砂が堆積する荒川や隅田川沿い、東京湾岸の埋め立てエリアを予測。葛飾区で470棟、江戸川区で286棟、大田区で233棟、足立区で104棟の建物が全壊すると想定する。
◆「起きない場所を選ぶことに尽きる」
では、首都で液状化のリスクにどのように備えればいいのか。防災コンサルタントで住宅診断士の田村啓さんは、建築前の最善策として「国土地理院の地図やハザードマップを見て、液状化が起きない場所を選ぶことに尽きる」とする。
リスクのない土地を選べない場合は「被害を受けた後、建物を直しやすくするのが大切」といい、強固な地盤まで鉄のくいを打ったり、「ベタ基礎」という工法で基礎全体をコンクリートで覆ったりする方法を紹介。すでに建てている場合は、地震保険への加入を勧める。
その上で、田村さんは「液状化が起きれば、自宅の被害にかかわらず地域のライフラインが壊滅する。皆が被災者になることを前提に備えなければならない」と強調する。「大都市は共助や公助はなかなか期待できない。発生直後1週間は自分たちで過ごせるよう、食料や生活用品を準備してほしい」と呼びかける。
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