定年後、「絶望の30年」を過ごす人と「幸せな30年」を過ごす人の分かれ道はここにあった…3000万人の人たちが誤解している「お金の使い方」(2024年4月16日)

日本人の3割が高齢者に

定年後とお金の大問題


 目の前に現れたその長い時間を、どう生きるのか。何を生きがいにして過ごしていけばいいのか――。そう考えて途方に暮れてしまう人もいるのではないでしょうか。私と付き合いのある高齢者のなかにも、「やることがなくて困っている」「何かやらなきゃと思うんだが、何をしていいかわからない」と言う人が少なくありません。

 「七〇歳になったらあれもやりたい、これもやりたいと思っていたけど、いざその歳になると、一人じゃ何もできないんだよ」と、愚痴をこぼす人もいます。

 皆さんの周りにも、孫の面倒をみたり、友達とゴルフに行ったりしながら、どこか物足りなさそうな人や、今の生活に納得していないような人がいるかもしれません。

 それは、「自分は○○のために生きるんだ」という目的を見失い、生きている実感が乏しくなっているからのように思います。

 「令和五年版高齢社会白書」によると、六五歳以上の高齢者全体のうち、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」人たちは少数派で、一二・〇%にすぎません。「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」人たちが五六・五%と、大半を占めています。

 そもそも、お金のあるなしと幸福感とは、必ずしも一致するものではありません。健康で精神的に安定した生活は、お金では買えないのです。

 毎晩のように高級車で一流レストランに出かけて食事をしているような人でも、自身の健康に不安があったり、家族間のトラブルに心を悩ませたりしているかもしれません。家計にあまりゆとりはなくても、家族皆が健康で、たまに近所のファミレスで仲良く食事をすることに幸せを感じている人も多いでしょう。

 もちろん、お金はないよりあったほうがいい。定年退職後の「第二の人生」を大過なく送るにも、ある程度の蓄えが必要なのは言うまでもないことです。

 しかし、蓄えがあればあったで、それをアテにして、新しい仕事に踏み出す意欲をなくしてしまう恐れもあります。毎日、何をするでもなくぼんやりと過ごし、仕事を通じて社会と関わることもない生活から、はたして生きる喜びや充実感を得られるでしょうか。定年退職は、「お金の本質」と「本当の幸福とは何か」について考えるよい機会だと思います。

さらに連載記事〈突然、足が動かなくなる恐怖…元伊藤忠商事会長・丹羽宇一郎が「大病を患ってわかったこと」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。

丹羽宇一郎

 

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