アメリカのトランプ前大統領が不倫の口止め料をめぐり業務記録を改ざんした罪に問われている裁判の初公判が15日、東部ニューヨーク州で開かれ、アメリカの大統領経験者が初めて刑事事件の被告となる裁判に大きな関心が集まっています。
東部ニューヨーク州のマンハッタン地区を管轄する裁判所の周辺には、15日、国内外から多くのメディアが集まりました。
アメリカの大統領経験者として初めて刑事事件の被告となったトランプ氏は、裁判所に到着すると報道陣に対し「こんなことはいまだかつて起きたことがない。政治的な迫害だ」と述べて、法廷に入りました。
トランプ氏は2016年の大統領選挙の前にみずからの不倫の口止め料の支払いをめぐり帳簿などの業務記録を改ざんした罪に問われています。
初公判では住民から陪審員を選任する手続きなどが進められ、評決までには2か月程度かかる見通しです。
トランプ氏はあわせて4つの事件で起訴されていますが、いずれも無罪を主張し、選挙妨害を目的とした司法権の乱用だなどと反発して初公判を延期するよう繰り返し求めてきました。
11月の大統領選挙を前にほかの刑事裁判に先駆けて進められることになった今回の裁判をめぐっては、アメリカのメディアがトランプ氏の言動や裁判の手続きを細かく伝えるなど大きな関心が集まっています。
トランプ前大統領「これは選挙妨害だ」
トランプ前大統領「これは政治的な迫害だ」
今回の刑事裁判は
起訴状などによりますと、トランプ前大統領は当時の顧問弁護士などを通じて、「トランプ氏と性的関係を持った」と主張するポルノ女優などに口止め料を支払ったとされています。
トランプ氏は、2016年の大統領選挙の前にこの口止め料をみずからの会社から弁護士側に返済した際、「弁護士費用」としたことが記録の改ざんにあたり、ニューヨークの州法に違反したとして、伝票や小切手ごとに34件について罪に問われています。
15日の初公判では、12人の陪審員と補充の6人を18歳以上の住民から選任する手続きが始まりました。
この後は、原則、週に4回のペースで公判が開かれる予定で、冒頭陳述を経て検察側の立証や弁護側の反論などが行われ、陪審員による評決までは2か月程度かかるとみられています。
アメリカメディアは、トランプ氏がこの裁判で有罪となれば、最大で禁錮4年が科される可能性があるという見方を伝えています。
無罪を主張しているトランプ氏は裁判に多くの時間や資金を割くことになり、11月の大統領選挙を前に法廷での証言をはじめ裁判の行方が注目されています。
トランプ前大統領が抱えるほかの刑事裁判
トランプ前大統領は、不倫の口止め料をめぐり業務記録を改ざんした罪に問われている今回の裁判のほかにも、3つの刑事裁判を抱えています。
▽このうち3年前に起きた連邦議会への乱入事件をめぐっては、その前の年に行われた大統領選挙の結果を覆そうと結果を確定する手続きを故意に妨げたとして、国家を欺こうとした罪などで起訴されています。
これについてトランプ氏は在任中の大統領としての行動は刑事責任が問われないと訴えています。
この審理が連邦最高裁判所で続いているため当初、ことし3月に予定されていた議会乱入事件をめぐる初公判は延期され、新たな期日の見通しはたっていません。
▽トランプ氏はまた、大統領を退任後に核兵器や軍の能力に関する情報など、最高機密を含む文書を不正に自宅で保管していたとしてスパイ防止法違反の罪などでも起訴されています。
▽さらに、トランプ氏は4年前に大統領選挙で敗れた際に南部ジョージア州での敗北の結果を覆すよう州政府に圧力をかけたとして、組織的な犯罪を取り締まる州法に違反した罪などでも起訴されています。
トランプ氏はいずれについても「起訴は選挙妨害を目的とした司法権の乱用だ」などと反発し、無罪を主張していて、全面的に争う姿勢を示しています。