トランプ商法阻むのは外交より裁判か(2024年3月22日『日刊スポーツ』-「政界地獄耳」)

★米トランプ前大統領や関連企業が所有する不動産の価値を不当に高く評価し、金融機関から有利な条件で融資を受けていたことをめぐる訴訟でニューヨーク州の裁判所が2月、金利を含め約4億5400万ドル(約681億円)の支払いを命じた。だが、約30社の保証会社への打診はすべて断られ、資産売却が現実的になっている。トランプはほかにも、25日に「口止め料」事件がニューヨーク地裁で初公判。5月20日には「機密文書」事件がマイアミ連邦地裁で初公判と4大刑事裁判が始まる。選挙資金は潤沢でも、裁判資金調達という金策が「もしトラ」を阻む可能性がある。

★その間を縫って5月7日、ロシアのプーチン大統領就任式に電撃出席するのではないかとの臆測がある。19日、トランプは英国メディアに「米国が北大西洋条約機構NATO)の大部分を負担しているのに、なぜ大金を持っている国々を守らなければならないのか」とNATO加盟国が防衛費をさらに負担しない限り、米国はロシアによる将来の攻撃からNATO加盟国を防衛しないという持論を訴えた。この訪ロがNATOを緊張に陥れるのは明白だ。一方、在日・在韓米軍撤退が持論のトランプがそれをぶち上げなくとも、プーチンが日本から米軍が撤退すれば、日ロ平和条約や北方領土返還を口にしたり、北朝鮮拉致被害者について国交樹立に言及した場合、どうなるだろう。

★本来は沖縄の米軍基地負担などが解決するわけだが、悲願達成と思うのは国民だけ。国体の護持は米国にありを体現してきた外務省や防衛省はその根幹を失いかねない。何が何でも在日米軍日米安保条約維持をもくろむだろう。あからさまな現状維持工作になりふり構わぬ行動にも出かねない。保守政党のはずの自民党も劇的なパワーバランスの変化に思考停止になるだろう。で、結局NATOへの手法と同じで防衛費の増強、つまり米国兵器の購入を強いられる。トランプ外交はトランプ商法だと見抜き、それを逆手に取る官僚も政治家もいないか。