政府は、実態を厳しく点検しなければならない。
国の予算は原則として毎年度、使途を国会に示して議決する必要がある。だが、基金は複数年度にまたがる事業が対象で、初年度に一括して支出を決めれば、その後は国会の議決が不要となる。
予算を年度内に消化しようとする「予算の単年度主義」の弊害を打破する狙いで作られた制度だ。長期的な事業に、柔軟に資金を使えるという利点がある。
最近では、企業の脱炭素に対する支援や、半導体工場の国内誘致などに利用されている。
ところが、政府が昨年秋以降、152の基金で実施している200事業について、管理体制や歳出状況などを点検したところ、有効に活用されていないケースがいくつも見つかった。
このため、経済産業省所管の「次世代自動車充電インフラ整備促進事業」など、15事業は廃止されることになった。
特に、このうち11事業は、補助金支給の業務を終えたにもかかわらず、基金を運営する独立行政法人の人件費などの支出が続いていた。なぜ、役割を終えた事業にお金が使われていたのか、理解に苦しむ。廃止の決定が遅過ぎる。
基金による事業は本来、10年以内という期限が設定されているのに、そのルールが守られていない例が多かった。政府は今回、改めて全事業について、原則、設置から10年以内の終了期限を設けることなどを決めた。
政府は2020年度以降、コロナ対策や物価高対策などを名目に相次いで大型の補正予算を編成し、その際に多くの基金を創設した。基金の残高は22年度末時点で16・6兆円に上り、19年度の2・4兆円から急増している。
政府は、基金が適正に運営されているか、引き続き点検を徹底しなければならない。
外部による監査の導入や、国会の決算委員会で毎年、各基金の支出をチェックすることなども検討してもらいたい。