地域コミュニティーの再生を(2024年4月14日『しんぶん赤旗』-「潮流」)

地域コミュニティーの再生を(2024年4月14日『しんぶん赤旗』-「潮流」)

 能登半島地震3カ月を前に、半島突端の珠洲市の被災地を取材したときのことです。観光名所の見附海岸には地震津波で浜に打ち上げられた船が残され、壊れた漁具が散乱していました。つぶれた家も、液状化で曲がって倒れかけた電柱もそのままでした

▼海岸付近の家屋の前で懸命に後片付けをしていた男性に声をかけると―。「海釣りが趣味で退職後趣味が高じて金沢の自宅とは別に、ここに別荘と自分の小船を持った。船は津波で流され、別荘の外見は建っているけど、液状化で使えない」と淡々と

▼大みそかは、おせち料理を食べながら師匠にあたる漁師との宴会でした。その後「1人で紅白歌合戦を見ていたら、急に寂しくなって夜中に金沢に戻った。おかげで命拾いをした」

▼甚大な被災のなか、前を向く人たちを紙面で紹介しました。蛸島(たこじま)地区の蛸島保育所避難所の責任者で、定置網漁と魚屋さんの再開をめざす漁師の田中悦郎さん。もう一人は伝統工芸・珠洲焼の維持をめざす岩城伸佳さんです

▼田中さんには全壊した自宅とは別に、避難所にも掲載紙を何部か郵送しました。「届きましたよ。避難所の人たちにも、元気出せと『赤旗』を回し読みした」との返事。SNS上へのアップも了承してくれました

▼「創造的復興」などという抽象的なことでなく、独特な日本海文化が息づく能登に生きてきて、これからも生きていきたいと思う人たちが主体になった地域コミュニティーの再生を。これからも、定点観測のように見届けたい。