うるま訓練場断念(2024年4月14日『しんぶん赤旗』-「主張」)

市民が団結すれば勝利できる
 「住民の力で勝ち取った」「団結すれば大きな力を発揮できる」―防衛省は、沖縄県うるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を新設する計画を断念しました。党派や世代を超え全県民規模の大きなうねりとなった世論と運動が断念に追い込みました。

 木原稔防衛相が11日に開いた臨時記者会見で「住民生活と調和しながら訓練の所要(必要性)を十分に満たすことは不可能であると判断したことから、うるま市における訓練場の整備計画を取りやめる」と表明しました。

■ごまかしを見破る
 建設予定地のゴルフ場跡地には、閑静な住宅地や自然豊かな県立石川青少年の家が隣接します。誰の目から見ても、訓練場と周辺住民の生活が両立しないことは明らかでした。

 木原防衛相は「うるま市はじめ地元の皆さまにおわびする」と陳謝しました。市民・県民の暮らしへの影響を頭に入れず、計画ありきで訓練場の建設を進めようとしてきたことを深く反省すべきです。

 地元に事前の説明を一切せず、訓練場建設のためにゴルフ場跡地の取得費を2024年度予算に計上したことも反発を広げました。

 防衛省が住民説明会で、当初想定していたヘリの離着陸や空包射撃は行わないと態度を変えたことも、逆に不信を高めました。

 沖縄では、自衛隊の施設が建設されたり、部隊が新設されたりすると、その後、なし崩し的に運用が拡大されてきた前例があるからです。

 例えば、宮古島に新設された陸自駐屯地には小銃の弾や発煙筒の「保管庫」を造ると説明していたのに、実際には、誘導弾(ミサイル)や迫撃砲弾などを貯蔵した弾薬庫が建設されていたことが分かり、大問題になったことがあります。

 与那国島でも、陸自沿岸監視隊の配備を認めたら、その後、ミサイル部隊を置く計画が明らかになり、自衛隊誘致に初めは賛成していた住民からも「だまされた」と批判の声が上がっています。

■新たな計画許さず
 木原防衛相は今回の計画は断念したものの、陸自第15旅団(那覇市)をより規模の大きい師団に改編するのに伴い、追加の訓練が必要になるのは変わらないとし、沖縄本島の別の場所に訓練場を建設する意向を示しています。

 木原氏は12日の記者会見で「全国各地を見渡した時に、人口が比較的多い地域に所在し、住宅地等に近接する訓練場は複数ある」などとし、「沖縄本島においても、住民生活と調和をしながら訓練所要を満たすことは不可能とは考えていない」と強弁しました。人口が多く、住宅地などに隣接する場所での訓練場建設を否定していないのです。

 しかし、沖縄は、面積で在日米軍専用基地の7割が集中しています。過重な米軍基地を押し付けられている上、さらに自衛隊の新たな訓練場を造ることが負担の増大につながることは明らかです。

 沖縄での自衛隊基地・部隊の増強は、周辺地域の軍事緊張を一層高めます。戦時になれば攻撃の標的になります。新たな訓練場の建設計画そのものを断念させることが必要です。