除染土の再利用 安全の理解醸成、道筋示せ(2024年4月13日『福井新聞』-「論説」)

 東京電力福島第1原発事故後に発生した大量の除染土をどう再利用するのか。環境省は最終処分量を減らす必要があるとして、放射性物質濃度が低い除染土を全国の公共工事で再利用する方針だ。国は除染土の安全性に対する理解醸成と、施策の道筋を示すことが求められる。

 2011年3月の事故では、有害な放射性物質が大量かつ広範囲に飛散した。除染作業では汚染された表土をはぎ取ったり、道路を洗浄したりして放射性物質を取り除く。東北と関東の8県で実施され、福島県の一部地域では今も続いている。

 除染土は福島県以外では現場の地中や仮置き場で保管している。福島県内は量が多いため、国が第1原発の周囲に造った中間貯蔵施設に集め一時保管し、45年3月までに県外で最終処分すると法律で定めた。除染土の再利用は最終処分量を減らすためである。これまでに発生した土などの除染廃棄物は、東京ドーム約11杯分にあたる約1400万立方メートルに上り、中間貯蔵施設に集められている。

 ただ、搬出先の選定のめどは立っていない。できるだけ早く最終処分の搬出先、再利用の方針を示す必要がある。伊藤信太郎環境相は3月の会見で「2024年度に最終処分や再生利用の基準を取りまとめ、国民の理解醸成にさらに力を入れていきたい」と述べている。関係省庁と連携し取り組みを加速してほしい。

 環境省は、除染土を実際に道路の盛り土や農地のかさ上げに使う実証試験を福島県内で実施し、安全性を確認できたとしている。除染土をさらに汚染されていない土で覆うことで、周辺住民への放射線の影響は無視できるレベルになるという。また、昨年10月から貯蔵施設の敷地内に除染土を使って道路を造り、再利用する際の工事や管理の手順を検討している。

 再生割合が増えれば、最終処分の負担は軽減される。実証試験の意義は大きく、国の取り組みが急がれる。ただ、東京など福島県外でも実証試験を計画しているが、周辺住民の反対で難航している。

 国民に再利用の必要性や安全性について理解を得られるかどうかが最大の課題となる。一つの省庁で事業を進めるのは困難で、政府一丸となり対応する必要があるのではないか。

 原発処理水問題と同様に、除染土の再利用は全国の課題として考えるべきだろう。本格実施につながるよう、国は国民理解の拡大と有効な次の施策を展開してほしい。