東日本大震災13年・除染土 理解育み処分の道筋示せ(2024年3月12日『河北新報』-「社説」)

 東京電力福島第1原発事故に伴う除染で発生した大量の土や廃棄物が、第1原発に隣接する中間貯蔵施設(福島県大熊町双葉町)に積み上がる。県外に搬出して最終処分する期限は2045年と定められているが、工程はまだ白紙と言っていい状態だ。国は具体的道筋を早期に示せるよう取り組みを加速すべきだ。

 除染土の最終処分は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法が「貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了」と明記する。貯蔵が始まった15年3月が起点とされ、残りは21年しかない。「このまま留め置かれ、最終処分場と化すのでは」と地元関係者が懸念するのは当然だろう。

 復興途上で、廃炉の難題にも直面する原発被災地が、負担を強いられる状況が長く続いていいはずはない。

 ただ、やみくもに急いでも課題の解決は難しい。除染土処分への国民的な理解を欠いたまま工程を作っても、画餅になりかねない。理解を深めるための努力が不可欠だ。

 除染土はもとはフレコンバッグに詰められ、福島県内各地に仮置きされていた。15年3月以降、中間貯蔵施設に順次搬入、貯蔵され、1月時点の搬入量は1376万立方メートルと東京ドーム11杯分に上る。

 大規模除染の終了で搬入はおおむね完了したが、希望者の帰還に向けた特定帰還居住区域で新たな除染が実施され、受け入れは当面続く。

 膨大な量の最終処分を目指し、環境省は再利用による減量化を図る。放射性物質濃度が1キログラム当たり8000ベクレル以下の土を、県内外の道路工事や農地整備といった公共事業に使う計画だ。対象の土は除染土の4分の3を占める。

 福島県飯舘村長泥地区では、除染土に土を覆って農地を造成し、野菜などを育てる実証事業が進む。20~21年度に収穫された作物の放射性セシウム濃度は1キログラム当たり0・1~2・5ベクレルと、基準値の100ベクレルを大きく下回った。

 福島県外では東京、茨城、埼玉3都県で再利用の実証事業が予定されたが、地元の反発などで実施できないのが実態だ。「実験段階でさえ、迷惑施設の扱いだということ」と福島県内の首長は嘆く。

 環境省の22年度調査では、除染土の再利用を知っていたのは福島県内が42・4%で、県外は14・4%に過ぎない。県外で最終処分することの認知度も県内58・1%、県外25・4%にとどまった。国の取り組みの遅れは明らかだ。

 第1原発の視察が増えている。併せて中間貯蔵の現場も見てほしい。事故で古里を追われた上、先祖代々の土地や自宅を除染土の置き場にされた大熊、双葉両町民の痛みを改めて理解してほしい。

 除染土の処分を人ごとと考えるべきではない。電力の利便性を享受してきた全国民の問題だ。国はその認識を基に事業を前に進める覚悟を示すべきだ。