重い、重い(2024年4月12日『佐賀新聞』-「有明抄」)

 
◆今年の小学新1年生のランドセルは平均5万9138円。購入額は年々右肩上がりで、6万5千円以上が全体の4割近い売れ筋。細やかな手仕事ほど値が張るものだが、この業界の職人は「60代なら若手」と言われるほど高齢化が深刻とか。買う方も作る方もシニア世代が支えている
◆県内でも入学式のシーズンを迎え、真新しいランドセルが校門をくぐる。〈入学の吾子(あこ)人前に押し出(い)だす〉石川桂郎。紺、水色、スミレ色…新たな出会いの場へと向かうカラフルな背中には、贈った側の期待も乗っかっている
◆こんな子どもたちの歓声が満ちた社会になるといい。国会では少子化対策の財源をめぐる論戦も始まった。ただ、公的医療保険に上乗せしながら、「国民の実質負担はない」という政府の説明はわかりづらい。肝心の対策の中身も見えず、「金に糸目は…」などと言えるはずもない
◆分厚い教科書にタブレット端末と、近ごろのランドセルは中身がずしりと重い。高齢化と人口減が加速する時代に、子どもたちが背負っているものの大きさを思ったりする。(桑)