訓練場「白紙」拒否 民意受け止め計画撤回を(2024年2月25日『琉球新報』-「社説」)

 地域住民の声を一顧だにしない防衛省の強硬姿勢があらわになった。

 うるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を新たに整備する計画を巡り、木原稔防衛相は20日閣議後会見で「計画を白紙にする考えはない」と述べた。
 木原防衛相は17日に来県した際、玉城デニー知事から計画を白紙にするよう求められていた。訓練場整備計画に対しては、旧石川市の全15自治会で構成する石川地区自治会長連絡協議会が計画断念を求めているほか、石川地区の与野党うるま市議7人も沖縄防衛局に計画反対を伝えている。これらを拒否する木原防衛相の姿勢は容認できない。
 計画されている予定地は住宅や教育施設に近く、旭区自治会は「地域住民の生活環境や教育環境に多大な影響を及ぼすことは明白」と訴える。
 中村正人うるま市長は17日、木原防衛相に「地元の声を真摯(しんし)に受け止め、よく検討してほしい」と要望した。自民党県連も「地元住民の理解を第一に、丁寧な検討」を求めた。与野党を超え撤回を求める声が強まっている以上、中村市長や自民党県連も地元の意向を尊重し撤回を要求してほしい。
 木原防衛相は、中村市長らとの面談後、土地利用の在り方について「改めてさらなる検討」を事務方に指示したという。自民党県連は、市民交流の場としての利用も視野に入れた見直しを求めているが、どのような利用であれ、陸自の訓練場であることに変わりはない。計画の撤回こそが「地元の声を真摯に受け止める」ことのはずだ。
 訓練場整備計画には、地元で反対の動きが広がっている。石川地区の市議7人、石川地区自治会長連絡協議会、米軍ジェット機墜落事故を語り継ぐ「石川・宮森630会」などが参加し、「自衛隊訓練場設置計画の断念を求める会」の準備会を立ち上げた。3月10日に同会を設立、同20日には市民集会を開催する予定だ。
 また、旧石川市の元市議や元市長らが計画断念を求めてOB会を設立した。かつて自民党に所属し、自民党県連会長など要職を歴任した照屋守之県議会副議長も反対を表明している。玉城知事も含め、自衛隊を容認する立場の政治家からも撤回要求が出ていることを、木原防衛相はどう受け止めるのか。
 防衛省は、駐屯地の新設やミサイル部隊配備など県内で急速に自衛隊強化を進めている。勝連分屯地へは地対艦ミサイル部隊の配備が計画されている。
 そもそも、なぜ新たに訓練場を整備するのか。沖縄防衛局は「部隊練度の維持向上に必要」としているが、自衛隊強化のためにさらなる施設が必要になるならば、県内の基地負担は加速度的に拡大する恐れもある。基地負担軽減に逆行するような訓練場整備計画は、撤回すべきだ。