国民が税金や社会保障などで〝世界有数の高負担〟にあえぐなか、さらに負担増が進みそうだ。ロシアのウクライナ侵略などに端を発したエネルギー高に対応し、政府が家庭や企業を対象に行っていた電気・ガス代への補助が5月に終了する見通しだというのだ。反対論も根強い再生可能エネルギー普及のため電気料金に上乗せされる「賦課金」も上昇し、値上がりは進む。
■1850円分増
「国民に、物価高を乗り越える2つの約束を、明確に申し上げる。今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現する。来年以降、物価上昇を上回る賃上げを、必ず定着させる」 岸田文雄首相は28日の記者会見でこう強調したが、負担増は厳しさを増していく。 政府は電気・ガス代負担を抑える補助金について、5月使用分を最後に終了する方向で調整している。電気とガスを使用する標準世帯で、計1850円分の負担増だ。
■ガソリンは継続
電気・ガス代補助は2023年1月使用分から行われていた。政府は原燃料の液化天然ガス(LNG)や石炭の価格が一時より下落し、補助の必要性が薄れたと判断したというが、エネルギー高の要因となる円安進行の先行きも見えないなか、チグハグな対応となった。
大手電力10社が28日発表した5月(4月使用分)の家庭向け電気料金は、前月比で全社値上がりだ。経産省が24年度の再エネ賦課金単価を1キロワット時当たり3・49円と、23年度から2・09円引き上げることを発表しており、この分が電気料金に反映される。 LNGの輸入価格上昇で、大手都市ガスも4社全てで値上がりとなる。
電気・ガスの5月使用分は政府補助金を半減させ、影響は6月料金に表れる。
一方、石油元売りへの支給でレギュラーガソリンの全国平均小売価格を抑制する補助は継続するという。
政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相は、物価上昇を上回る所得や賃上げを約束したが、政府、自民党が約束を守るのか、補助の打ち切りが妥当かどうか、国民は選挙などを通して厳しく『審査』するときだ。
わが国では長く値下げ競争が続き、賃上げもされず30年間、デフレを解決できなかった。経済の循環を止めていたのは政治家、官僚を含めた全体責任だ。補助は人気取りの側面があり根本的解決にはならない」と指摘した。