仕事失ったアマゾン労組組合員 「懸命に荷物運んできたのに…」(2024年4月9日『毎日新聞』)

軽ワゴン車の荷台から荷物を取り出す労働組合「東京ユニオン・アマゾン配達員組合長崎支部」の組合員の男性=長崎市で2024年4月8日午後0時35分、樋口岳大撮影
軽ワゴン車の荷台から荷物を取り出す労働組合東京ユニオン・アマゾン配達員組合長崎支部」の組合員の男性=長崎市で2024年4月8日午後0時35分、樋口岳大撮影

 インターネット通販大手「アマゾンジャパン」の商品を長崎市などで運んでいた配達員の労働組合東京ユニオン・アマゾン配達員組合長崎支部」の組合員らが、8日を最後に仕事を失った。組合員らは1カ月前にストライキをして就業継続を訴えたが、かなわなかった。組合員の男性は「懸命に荷物を運んできたのに無念」と悔しさをにじませた。

 男性は2021年11月から、2次下請け業者(埼玉県川口市)と業務委託契約を結び、3次下請けの個人事業主として働いた。契約時には「1日100個くらい」と説明を受けていた荷物個数は増え続け、200個を超える日もあった。長崎市内の物流拠点で自ら用意した軽ワゴン車に商品を積み込み、車が通れない坂や階段、路地が多い斜面地などで運び続けた。

 日当は当初の1万4500円から、ほとんど変わらなかった。燃料代や車の整備費などは自己負担。ガソリン価格の高さが全国トップクラスの長崎で重くのしかかった。男性らは23年9月、セールで荷物が増えた際に支給されると説明を受けた加算金が約束通り支払われなかったとして、業務を半日ボイコットした。配達員の不満が爆発した形になった。

 23年12月には1次下請け業者(横浜市)が、2次下請けに24年4月8日をもって契約を終了すると通告。従来通りに仕事を続けることができなくなるため、労組は就業継続を求めて1次下請けに団体交渉を申し入れたが、1次下請けは「法的に応じる義務はない」と拒否した。

 労組は契約終了の1カ月前の3月8日にストライキを決行。男性は上京し、アマゾンジャパン本社にも就業機会の確保に向けて1次下請けを指導するよう要請したが、回答はなかった。

 勤務最終日の4月8日は雨。男性はこの日も、朝から夜まで約190個の荷物を届けた。途中で足を止め、「組合員たちは配達ミスもほとんどなく、利用者に喜ばれていた。運送業界が人手不足の中で、なぜ配達ルートや業務に慣れた私たちが仕事を失わなければならないのか」と言葉を絞り出した。

 男性たちは個人事業主とされているため失業手当などはなく、次の仕事を探している。

 1次下請けは取材に「弊社の認識及び見解については、今後の諸手続き等の中で明確に主張する方針なので、現時点で本件に関する詳細なコメントや個別の質問に対する回答は差し控える」などと答えた。今後の配送については「多くの委託ドライバーのご理解、ご協力を得て、配送業務に遅延等の支障を生じさせることなく遂行する予定」とした。【樋口岳大】