筆談で伝え合う美術の楽しさ 県内初の鑑賞会、13日に伊那市で 日本画家・池上秀畝の作品題材に(2024年4月9日『信濃毎日新聞』)

手話通訳(右)を交え、文化会館の担当者(中央)と打ち合わせをする小笠原さん。広げているのは過去の鑑賞会で参加者が感想などを書き込んだ紙

 

 伊那市西町の県伊那文化会館で13日、美術作品について感じたことや疑問を筆談で伝え合う「筆談で鑑賞会」が開かれる。題材は同市出身の日本画家で、生誕150年を迎えた池上秀畝(しゅうほ)(1874~1944年)の作品。聴覚障害があり、この鑑賞会を考案した小笠原新也さん(62)=東京=を招き、進行役を担ってもらう。障害の有無などにかかわらず、誰もが美術鑑賞を一緒に楽しめるのが特長で、県内での開催は初めて。

 小笠原さんは徳島県立近代美術館徳島市)で、来館者が障害の有無や年代、国籍にかかわらず楽しめる施設運営に参加。筆談による鑑賞会はその一環で6年前に始め、現在は全国の美術館で開催している。伊那文化会館の職員が鑑賞会に参加したことがきっかけで、招くことになった。

 鑑賞会では、参加者が同じ作品を見て感じたことを1枚の大きな紙に自由に書き込んでいく。この間、会話はしないことがルール。好きなタイミングで自分の考えを表明することが可能で、考えを言葉にするのが苦手な人でも気軽に参加できるのが利点だ。小笠原さんは、同じ内容の感想があればそれをつなげる線を紙に書き込み、同じ視点を持った人がいることを伝えたり、感想を読んで自身が思ったことを書き加えたりする。

 「両親がアートが好きだったので、子どもの頃にたくさんの美術館に連れて行ってもらった」と振り返る小笠原さん。「絵を見るのも描くのも大好き」という。

 伊那文化会館では現在、秀畝の作品展を開催中。鑑賞会の題材は、この作品の中から選ぶ。打ち合わせのため6日に同館を訪れた小笠原さんは、秀畝について「伝統にこだわらず新しい試みをした」と評価。「鑑賞会は私も一緒に楽しみたい」としている。

 午後1時半から。定員10人。事前にメールかファクスで申し込む。鑑賞会は無料だが、作品展の観覧券が必要。申し込み方法などの詳細は伊那文化会館のホームページで確認するか、同館へ電話(電話0265・73・8822)で。